1974 年 1974 巻 12 号 p. 2356-2360
フェニルアセチレン[1]とテトラヒドロララン(THF)との光反応で,1:1の付加物(β-テトラヒドロ-2-フリル)-スチレン[2a,2b]が得られた。この反応は水素引き抜き性の強い三重項増感剤を用いた場合に起こり,低圧水銀燈の照射ではほとんど起こらないことから,励起された増感剤がTHFの水素を引き抜いて反応が進行するものと考えられる。フェニルプロピオール酸メチル[3]とTHFの系においても1:1の付加物α-(テトラヒドロ-2-フリル)-ケイ皮酸メチル[4a,4b]が得られた。この反応は1,3-ペンタジェンにより消光され,そのStern-Volmerプロットは直線を示した。また各種三重項増感剤に零り増感効果が認められた。したがって,この反応は[3]の励起三重項状態を経て進行するものと考えられた。また付加物の光増感シス-トランス異性化反応についても検討した。これらの結果から,[3]および[4b](トランス異性体)の最低励起三重項エネルギーは,それぞれ56,9~61.8および59.5kcal/mol前後と推定された。
この記事は最新の被引用情報を取得できません。