1974 年 1974 巻 5 号 p. 825-829
臭化コバルト(II)のアセトン溶液は常温常圧下で青色を示し,そのおもな分子種はCoBr2(Ac)a(ただしAcは溶媒のアセトン分子を表わす)で,673 nmに吸収極大をもつ(εmax = 400)。室温で8000kg/cm2までの高圧下で可視吸収スペクトルの測定を行ない,既報の塩化コバルト(H)の場合と同様に新しい吸収の出現が認められることを見いだした。これは新たな分子種CoBr8(Ac)-と同定され,塩化コバルトの場合と同様につぎの二つの平衡
CoBr2(Ac)2-4Ac Pt Co(Ac)e2+2B (1)
CoBr2(Ac)2+Br- CoBr3(Ac)-+Ac (2)
が存在するものとみなされ,これらの乎衡に対する圧力効果を検討した。
平衡(1)において加圧による平衡移動にともなう体積変化をΔV1とすると,ΔV1は絶対値の大きな負の値をとり,加圧による変化も大きい。一方,平衡(2)において ΔV2 は小さく,圧力依存性はほとんど認められない。これは平衡(1)はイオンの生成および配位数の増加による自由体積の減少をともなうものであり,一方,平衡(2)はイオン種同志の平衡で配位数も変化しないということから予想されることと一致する。
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