日本化学会誌(化学と工業化学)
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フェナントレンの精製とケイ光特性
岩島 聰倉町 三樹沢田 忠信小林 孝嘉竹川 実藤沢 捷二青木 淳治
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1974 年 1974 巻 5 号 p. 841-846

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抄録

高温タールピッチから抽出したフェナントレンには除去が困難なフルオレン,カルパゾール,アントラセンなどが不純物として混入してくる。この不純物を除去するには,10gの市販フェナントレンと100gの無水マレイン酸および8gのクロロアニルとともに4時間煮沸後,200 mlのベンゼンを添加し,さらに1時間煮沸する。つぎにベンゼン層を分取し,この中に水酸化カリウム水溶液を加え80℃で30分間かきまぜる。ふたたびベンゼン層を分取し,減圧蒸留し析出するフェナントレソを集める。この13gのフェナントレソを100 mlの無水エチルアルコールとともに煮沸しながら,この中に1.7gの金属ナトリウムを添加後,3時間煮沸する。放冷後,炉過し炉液から得られるフェナントレンを昇華および帯域融解をくり返すことがもっとも効果的であることがわかった。
不純物の検出には,固体状態のケイ光スペクトルおよびケイ光寿命の波長依存性から求めた。高純度フェナントレンのケイ光極大位置は,室温では370,380 nm,液体窒素温度では355,370,385 nm付近に現われる。また低純度試料では,室温および液体窒素温度で370nm付近は観測され難く,395,409,430nm付近に現われる。一方,ケイ光寿命は室温で高純度試料で平均値として62.5n,sec,低純度試料では10~44n,secである。

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