日本化学会誌(化学と工業化学)
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酢酸コバルト(III)によるトルエンの酸化 ―金属塩添加効果―
河合 良三神谷 佳男
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1974 年 1974 巻 5 号 p. 933-938

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抄録

酢酸コバルト(II)は酸素非存在下,酢酸溶液中でトルエンなどの芳香族化合物を可逆的一電子移行過程を経由して酸化する。一方,他の高原子価状態の金属の酢酸塩,酢酸マンガン(II),酢酸銅(II),酔酸セリウム(N)などは低温においてはトルエンの酸化に対してほとんど活娃を示さないことが明らかとなった。そればかりでなくコバルト(II)の酢酸溶液にこれらの金属塩を添加すると,トルエンの酸化におけるコバルト(II)の活性がいちじるしく低下することがわかった。また低原子価状態の金属塩もコバルト(II)の活性を低下させた。他種金属塩の添加量が一定量を超えた場合はコバルト(II)はトルエンの酸化においてまったく活性を示さなくなるが,添加金属塩の妨害効果の大きさの序列はつぎのとおりである。
Mn(II)>Mn(II)~Ce(V)>Cu(II)
可視吸収スペクトルを調べることにより,他の金属イオンの妨害効果は,コバルト(III)との間に形成される多核錯体によるものであることが推定された。またトルエンの酸化においてまったく活牲を示さないCu(II)-Co(III)がα-メチルナフタレンの酸化においてはコバルト(III)単独系の場合と同じ活性を示すことが明らかになったが,このことからコバルト(III)と他の金属塩との聞に形成される多核錯体はコバルト(III)よりも酸化還元電位が低いためにトルエンの酸化に対しては活性を示さないものと考えられる。

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