日本化学会誌(化学と工業化学)
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二酸化窒素酸化によるセルロース繊維の結晶化現象
林 治助升田 重嘉五十嵐 卓弥渡辺 貞良
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1975 年 1975 巻 12 号 p. 2205-2210

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抄録

ラミーを十分乾燥状態でNO2ガスにより酸化した。結晶化度は最初酸化とともに低下するが,途中から増加に転じ250mmolCOOH/1009の酸化度のものは原料ラミーのそれの1,3倍にも達する。またこれらの試料では[101]方向に微結晶幅の増大が見られた。しかしこの点から結晶化度はふたたび減少に転じ,急速に非晶化が進む。これら酸化セルロースをCa2などの塩にすると結晶化度が低下し,その度合は酸化によって結晶化度が増加した試料ほど大きかった。しかしこれらを希塩酸で処理し脱塩したところ,ほぼ完全に元の結晶化度に復した。HIO4-HCIO2酸化セルロースでは,結晶化度は酸化の進行とともにほぼ直線的に低下し,造塩および脱塩によって変化しなかった。NO2酸化ではセルロースのC6位の第-級水酸基が選択的にカルボキシル基になるが,この水酸基は分子間水素結合によって(101)面を貼り合わせている。酸化によってもメチレン基のH2をカルボニル基の0に代えるだけでC6の位置をまったく変えることなく,セルロースと同じ分子間水素結合を形成できる。このため酸化による非晶化が少ないばかりか(101)プレーンラティス構造である非晶部を結晶構造に取り込んで結晶化度は増大する。このことは[101]方向の微結晶幅の増大をもたらすことになる。

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