日本化学会誌(化学と工業化学)
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エチレン分子へのメチルラジカルの付加反応機構に関する分子軌道法による一考察
洒井 章伍大岩 正芳
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1976 年 1976 巻 12 号 p. 1869-1873

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抄録

エチレン分子にメチルラジカルの付加する反応に関し,CNDO/2分子軌道法を用いて考察を行なった結果,つぎのようなことが明らかとなった。すなわち,この反応は分子間の軌道の重なりが生じ始める反応初期と,プロピルラジカルとなる反応後期とでは電荷移動の方向が異なり,この反臨は二段に進行するものと考えられる。まず,反応の初期においては,エチレン分子からメチルラジカルへの電子の移動が主として起こり,この段階では,エチレン分子の最高被占軌道(HOMO)とラジカル分子の最低空軌道(LUMO)の相互作用が反応の促進に重要な働きをしており,ここではエチレン分子のHOMOがラジカル分子の接近方向を決定している。反応後期のプロピルラジカルの生成に関しては,反応初期の場合とは逆にメチル部分からエチレン部分への電子移動が主となり,この段階ではエチレン分子のLUMOとラジカル分子のHOMOの相互作用が重要な働きをし,ここではエチレン分子のLUMOがラジカル分子の移動方向を決定するという結果が得られた。

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