1976 年 1976 巻 12 号 p. 1908-1912
親水性モノマーの2-ヒドロキシエチル=メタクリラート(HEMA)と疎水性モノマーのスチレン(St)を用いて,種々の分子量のHEMA低重合体,St低重合体および種々の組成のHEMA-St共低重合体を合成した。これらのブレンドマーおよび共低重合体のDMF溶液からキャストしたフィルムについて純水のぬれを測定した。ブレンドマーと共低重合体のぬれの挙動は大きく異なり,ぬれは組成だけに影響されるのではないことがわかった。ブレンドマーについて,親水性および疎水性の連鎖長に注目してみると,St低重合体の分子量の増加にともなって,ぬれは低下する。これは,St低重合体により形成される疎水性ドメインの大きさが増大するためであることを,電子顕微鏡観察から明らかにした。さらに,ブレンドマーの組成変化に対して,ほぼ-定の大きさの疎水性ドメインが形成され,HEMAモル分率が増加した場合その-定の大きさの疎水性ドメインの数の減少が認められた。また,共低重合体の電子顕微鏡観察から,HEMAモル分率が0.655から0.808へと増加すると,HEMA連鎖により形成される親水性ドメインは点状から連続したドメインへ変化し,広がりの増大が認められる。これはぬれの急激な立ち上がりに対応していると考えられる。親水性,疎水性の機能発現には,それぞれの連鎖の集合状態,すなわち親水性ドメイン,疎水性ドメインの大きさおよび形態が大きく影響していることがわかった。
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