1979 年 1979 巻 8 号 p. 1027-1032
黒鉛の低フッ素化率試料は粒子表面のフッ化黒鉛層と内部の未反応黒鉛とからなる。未反応黒鉛の構造ひずみの測定から,黒鉛のフッ素化は,反応界面付近できわめて大きな応力を生じつつ進行し,未反応黒鉛にひずみやクラックなどの構造破壊をもたらす反応であることが確認された。試料のESCAスペクトル測定から,フッ化黒鉛層表面には〓CFだけでなく,CF2,-CF3基が存在し,かつ,未結合炭素も存在することがわかった。試料の非常に大きな湿潤熱は,試料に存在する酸化能を有する比較的弱いCF結合のフッ素と湿潤液との反応による化学的発熱に起因する。化学的発熱の寄与を除去した湿潤熱はなおフッ化黒鉛より大きいが,これは未結合炭素の存在によるものであり,このため試料の比抵抗も絶縁体ではなく半導体領域の値となる。ESCAスペクトル強度,湿潤熱,比抵抗の反応率依存性の対応関係から,黒鉛のフッ素化は,わずかな未結合炭素を残しながら粒子端面から内部に向って進行し,残存した未結合炭素は反応中に順次フッ素化されると推察された。
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