日本化学会誌(化学と工業化学)
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アルカリ金属と黒鉛による多塩素化ビフェニルの脱塩素化
奥 彬上田 博之玉谷 浩章
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1980 年 1980 巻 12 号 p. 1903-1906

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抄録

多塩素化ビフェニル(PCB,KC-400)をTHF中0℃でカリウム黒鉛挿入化合物(C8K)と反応させると,70分間でほぼ完全に脱塩素化した(脱塩素率99.95%)。還元剤中にPCBを滴加する方法とその逆(順および逆滴加法)との比較では顕著な差は認められず,低温(-75~-50℃)での脱塩素率も低く, また処理物中の残留有機性塩素の分析値がX線法とガスクロマトグラフ法とで異なることから, 本処理反応の速度がナフタレニド(Naph-)法にくらべて遅いこと,また多量化した処理生成物中の堪素の脱離がPCB成分にくらぺて遅いことなどが示された。処理物の組成は複雑であり平均分子量は230~270(Naでは360~530)と高いが,アルコール共存下では低下し(167~194)非置換ビフェニルが主成分であった。ナトリウみもカリウムと同様の結果を与え,脱塩素効率はむしろ良好であるが,還元剤の完全分散体を得るためにカリウムよりも多量の黒鉛を必要とした。本法ではPCB完全脱塩素化にはNaph-法と比較して多くの還元剤を必要とするが,黒鉛を容易に回収再利用できる点に特徴がある。

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