日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
醤油の香リ立ち(TopNote)を構成ずる成分
佐々木 正興布村 伸武
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1981 年 1981 巻 5 号 p. 736-745

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抄録

良質の本醸造醤油を器に注いだとき,最初に感じる豊醇ないわゆる香り立ち(topnote)は,甘く爽やかで食欲をそそる役目を果たしている。新鮮な醤油にはとくに強く,晶質上重要視されるが,短時間のうちに変化,消失しやすく,構成成分については,いまだ十分に解明されていなかった。本報告では,醤油品質のより一層の向上を目的にこの香りの本体の解明を試みた。大量の醤油から目的区分の香りを選択的に濃縮し,GC-MS分析を中心とした方法で54成分を同定した。このうち76成分は醤油からはじめて見いだした物質であった。確認成分のうち,量的に多い14成分については,ヘッドスペースーガスクロマトグラフ法による定量法を確立し,各成分のodor unitsを算出した。その結果,topnoteの香りは,各種のアルデヒド,エタノールなどがその中心をなし,含硫化合物などが補助的に作用しているであろうことが推察された。また,品温および放置時間と香気成分量との関係を明らかにすることにより,デリケートで変化しやすい香り立ち香の性質の一端を説明することができた。

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