1981 年 1981 巻 8 号 p. 1205-1211
塩化水素を水から水-1-プロパノール混合系へ移転ずるときの標準モルGibbsエネルギー変化が,ガラス電極を用いた電池の起電力法によって測定された。またGibbsエネルギーの温度変化から,相当したエンタルピーとエントロピー変化の値が求められた。これらの熱力学諸量の変化は,イオンに配向した溶媒分子層と巨視的誘電率をもったバルク層の二つからなる不連続な溶媒和モデルによって,イオンとその周囲の媒質との相互作用を取り扱うことによって考察された。その結果,1-プロパノールの濃度が0~30%の範囲では,H3O+とCl-の移転における溶媒和層のエンタルピーおよびエントロピー変化はいずれも正であるが,1-プロパノール濃度がこれよりも大きくなると,それらの値はしだいに負になっていくことがわかった。これらの量は溶媒分子がイオンへ配向するときの熱力学関数の変化を表わすものであり,混合溶媒の講造的性質の変化と関連つげられる。すなわち水に少量の1-プロパノルを混合したときに起こる液体の構造性の増大が,溶媒和層における分子の再配列にともなう熱力学関数の変化と溶媒組織との間に極大を生ずるものと解釈される。
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