1985 年 1985 巻 9 号 p. 1666-1670
ベンゾフェノンアジンの加水分解によるヒドラジンの生成について,まず均一系で有効な酸とその所要量を調べた結果,酢酸のような弱酸では溶媒的過剰量存在しないとほとんど反応しないが,有機強酸のp-トルエンスルホン酸は少量で硫酸に匹敵する活性を示すことがわかった。そこで,不溶性固体酸としてスルホン酸樹脂の応用を試み,とくに適量の水を吸蔵するMR型樹脂を高濃度のアジンが溶存するトルエン中に懸濁させると,相互不溶の水とアジンが表面酸点で効率よく接触して定量的にヒドラジンに変換できることを見いだした。親水媒体中では反応がおそく,スルホン酸基が強く溶媒和されて酸が弱められると考えられるが,疎水媒体中では90℃,わずか1時間で95%という高いアジン変化率を得る。しかし,樹脂の含水量には適値があって,粒内のマクロ孔もすべて水でみたすとまったく反応しないので,液水に浸潰演別した樹脂の乾燥特性曲線から含水状態を考察した結果,MR型樹脂を構成する親水性微小球が水を吸蔵して膨潤し,かつ微小球の間隙のマクロ孔が空孔である条件がもっとも有効であると結論した。
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