日本化学会誌(化学と工業化学)
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レフェニルアラニンとの付加物形成による疎水性側鎖を有するDL-アミノ酸の光学分割
白岩 正佐渡 勇人阪口 佳司井川 明彦黒川 秀基
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1985 年 1985 巻 9 号 p. 1734-1739

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抄録

L-フェニルアラニン(L-Phe)との付加物形成により,DL-アラニン(DL-Ala),DL-α-アミノ酪酸(DLAbu),DL-ノルバリン(DL-Nva),DL-ノルロイシン(DL-Nle)ならびにDL-メチオニン(DL-Met)の光学分割を行なった。初期溶液としてL-PheとこれらのDL-アミノ酸を含む水酸化ナトリウム溶液,または水溶液を用いて光学分割を行なった結果,晶出条件によって,それらのD-アミノ酸とL-Pheとの等モル量からなる析出物が得られた。それらの赤外吸収スペクトルにより,これらの析出物はL-PheとD-アミノ酸との単なる混合物ではなく,一種の付加物を形成していることがわかった。これらの析出物から,光学純度75~100%のD-Ala,D-Abu,D-NvaならびにD-Metが得られたが,D-Alaの収率は極端に低い値であり,またD-Nleの光学純度は約46%であった。初期溶液として水溶液を使用した場合,これらの析出物を炉取したあとの炉液から,さらに析出物を晶出させてL-アミノ酸を得ることもできたが,L-Nva,L-NleならびにL-Metの光学純度は,30%程度であった。しかし,L-Abuの光学純度は87.3%を示した。さらに,初期溶液として塩酸溶液を用い,同一条件下で上記のD-アミノ酸,D-バリン,D-ロイシンまたはD-イソロイシンと,L-Pheとの付加物を晶出させた。それらの光学分割の結果の比較から,これらの付加物の形成は,L-Pheとこれらのアミノ酸の側鎖間の疎水性相互作用に起因すると考えられた。

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