1987 年 1987 巻 3 号 p. 386-390
置換基の形の類似性を定量的に表わすためのパラメーター(SI)は,1対の置換基を空間内で重ねたときに,たがいに重なり合う程度として定義できる。SI値を計算するためのプログラムを開発し,1対の会合性チオールの置換基問でのSI値と,チオールの酸化反応の選択性(分子識別の尺度)との関係を調ぺた。高い選択性を与える置換基の組み合わせのときに,SI値も大きくなる傾向のあることが明らかになった。選択性は,チオール聞の反応性の差や溶解度差には依存しない。また選択性を,チオールの置換基の電子的効果,立体効果および疎水性で説明することはできない。これらの結果は,「識別に関与する置換基の三次元的な形がたがいに類似しているときに,より特異的な分子識別が起こる」という"類似性識別仮説"を支持している。
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