1987 年 1987 巻 3 号 p. 430-434
ジクロロメタン層を液膜とするLi+,Na+,K+イオン共存下での競争輸送系において,オクチルおよびドデシルモノアザ15-クラウン-5のピクリン酸塩が,すぐれたNa+/K+,Na+/Li+選択性を有するpH制御可能な新しい型の能動輸送剤であることを見いだした。なかでも放出層側への親油性陰イオンの漏れがほとんど検出されない事実は,このイオノホアがカルボン酸型イオノホアと輸送機溝が異なるにもかかわらず,原理上同じ働きをしていることを示している。カルボン酸型イオノホアと比較して,親油性陰イオンの存在が有利に作用する点とイオノホアの構造が単純で合成しやすい点に特徴がある。一方,モノアザ18-クラウン-6誘導体においては,K+/Na+選択性を示した。また,ラリアートエーテル化することにより,錯形成能の上昇を反映して抽出率は増加するものの輸送速度はほとんど変わらず,逆に陽イオン選択性は低下することが認められた。本能動輸送系の開発により錯形成に関与する部位にpH制御可能な基を有してさえいれば,比較的低い錯形成能しかもたないホスト化合物であっても効果的な輸送が可能であることが明らかになった。
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