日本化学会誌(化学と工業化学)
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リン脂質膜へのトリウム(IV)イオンとテトラフェニルホウ酸イオンの相乗吸着性
古澤 邦夫渡辺 勉松村 英夫
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1987 年 1987 巻 9 号 p. 1627-1631

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抄録

金属多価イオンと脂溶性陰イオンを含む系で観察される両イオンのリン脂質(PE)膜への相乗的吸着現象がTh4+とTPB-を含む系で詳細に検討された。実験的検討はTh4+ とTPB-をいろいろな割合で含む溶液からPEベシクルの両イオンの吸着量の測定と気-水界面に展開されたPE単分子膜の表面電位の測定により行なわれ,つぎのような結果が得られた。両イオンの相乗吸着現象は段階的に進行し,低イオン濃度では負に帯電したPEベシクルへのTh4+ の吸着量によって現象は支配される。イオン濃度の増加とともに,次第にTPB-の吸着量が増大し,やがて電気的中性の条件から期待されるTPB-/Th4+=4/1のモル比に到達する。このような溶液中のイオン濃度により吸着されるイオン組成が変化する現象は単分子膜による表面電位測定にも現われ,高イオン濃度領域では大きな負の表面電位を示すことがわかった。この相乗的吸着現象には,TPB-とPE分子の疎水部との作用や配向したPE分子の極性基中にある電気双極子の正の電位も関係していると思われる。

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