日本化学会誌(化学と工業化学)
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電子スピン共鳴法によるリン酸塩皮膜結晶中のニッケル成分の状態解析
佐藤 登南 達郎
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1987 年 1987 巻 9 号 p. 1741-1745

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抄録

リン酸塩皮膜結晶,とりわけ亜鉛系めっき鋼板上に形成されるHopeite結晶,Zn3(PO4)2.4H2Oが浴組成におおじてマンガンやニッケル成分を含有する。しかしながら,これらの成分が結晶中でどのような状態をとるものかについてはいまだ解明されていなかった。本研究では,このような成分が不対電子をもっていることに着目し,電子スピン共鳴法による解析を見いだすものである。ここでは結晶中のニッケル成分に対しd電子状態の解析を試みた。その結果,Hopeite結晶中に含有された1.7wt%のニッケル成分は電子スピン共鳴に対し,3本の吸収スペクトルを与えながら応答した。これはニッケル成分が結晶中においてNio+,すなわち金属状態ではなく結晶の一部に配位した遷移金属イオンとして存在することを示唆するものである。そしてこのニッケルの状態については,Hopeite結晶中の亜鉛の一部を置換したZn3-xNix(PO4)2.4H20なる改質結晶と推定された。

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