日本化学会誌(化学と工業化学)
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ポリ(L-グルタミシ酸γ-ベンジルエステル)液晶のピッチ-温度関係
森 紀夫
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1988 年 1988 巻 3 号 p. 326-331

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抄録

ポリ(L-グルタミン酸γ-ベンジルエステル)液晶のコレステリックピッチ(P)の温度(T)依存性が,溶媒の種類を変えて一定濃度の下で測定された。これまでに報告されている異なった実験結果を詳細に検討した結果,ピッチの温度依存の正確な関数形を得るためにはつぎの二点が必要であることがわかった。(1)ピッチは時間に依存しない,熱力学的平衡状態にあること。(2)測定している系が,等方相やゲル相を含まない,単一な液晶相であること。さらにこれまでに提出された,または想定されるP-T関係式の中で,いずれの関数形が実験事実をより正確に表示しているかを決定するために,統計学的手法を用いて比較検討した。これらの諸点を踏まえて検討した結果,もっとも正確なピッチの温度依存の関数形は溶媒の種類によらず,コレステリックらせんの回転角に相当するピッチの逆数1/Pが,温度の逆数1/Tの一次関数であるという結論が得られた。この結論は,従来の分散力のほかに,分子同志の衝突による反発力の効果を導入した木村らによる理論結果の,1/Pの温度依存の項と正確に一致した。

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