日本化学会誌(化学と工業化学)
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ガスクロマトグラフィーによる船底防汚塗料から海水中に溶出ずるジブチルスズおよびトリブチルスズ化合物の定量
高橋 一暢
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1990 年 1990 巻 4 号 p. 380-384

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抄録

炎光光度検出器付きキャピラリ-ガスクロマトグラフィ-(GC-FPD)による海水中のμg/1(ppb)もレベルのジブチルスズ(DBT)およびトリブチルスズ(TBT)化合物の同時定量法について検討した。海水中のDBTおよびTBT化合物を塩酸酸性下で,それぞれ二塩化ジブチルスズ(DBTC)および塩化トリブチルスズ(TBTC)としてトルエンで抽出したのち,DBTC,TBTCを水素化ホウ素ナトリウムによって水素化ジブチルスズ(DBTH)および水素化トリブチルスズ(TBTH)としてGCFPDで定量した。分離カラムは化学結合型溶融シリカキャピラリーカラムHiCap-CBP1-W25-300(OV-1相当,25m×0.53mmi.d.)を用い,注入口温度250℃,検出器温度300℃ に設定した。カラム温度は70℃(1分)から200℃ まで10℃/分で昇温した。本法による海水中のDBTC(104μg/l)TBTC(110μg/l)の回収率は,それぞれ92.3%,111.7%を示し,DBTおよびTBT化合物が同時定量できることがわかった。そこで,本法を用いて約10か月間海中浸潰した自己研磨型船底防汚塗料ミの塗膜表面からのDBTおよびTBT化合物の溶出速度について検討した結果,船底防汚塗料中のTBT化合物が海中浸漬によって一部DBT化合物に分解することが明らかとなった。

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