日本化学会誌(化学と工業化学)
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1-Methyl-4-(4-diethylaminophenylazo)pyridiniumiodideの水溶液および吸着分子層の電子吸収スペクトル
小林 迪夫前田 佳男徳永 均高橋 典雄星 敏彦小野 勲大窪 潤
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1991 年 1991 巻 12 号 p. 1582-1587

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抄録

1-Methyl-4-(4-diethylaminophenylazo)pyridiniumiodide(以下MDPと略記)の電子吸収スペクトルを種々のアルコール-水系混合溶媒中および酸性・アルカリ性水溶液中で測定し,MDPの電子吸収スペクトルにおよぼす溶媒の極性や酸・アルカリの影響を調べた。また,ホウケイ酸ガラス板の表面に吸着したMDPの電子吸収スペクトルを測定し,この分子の吸着状態について考察した。MDPの第一吸収帯は溶媒の極性の増大とともにレッドシフトする。したがって,この吸収帯は1-methylpyridiniumiodide,で観測されているようなI-からピリジニウム環への電荷移動に起因したCT帯ではなくI-の関与しない通常のπ-π*遷移に帰属される。また,MDPへのプロトン付加では,最初のプロトンはアゾ窒素には付加せずアミノ窒素のみに付加することを,プロトン付加にともなうMDPの電子吸収スペクトルや13C-NMRスペクトルのスペクトル変化により明らかにした.一方,水を含んだ湿った状態および水を含まない乾いた状態でガラス面に吸着したMDPのスペクトルは互いに異なることが判明し,湿った状態で吸着した場合にのみMDPのアミノ窒素へのプロトン付加体に由来した吸収帯が観測される。この観測結果は,湿った状態で吸着したMDP分子はアミノ窒素へのプロトン付加に類似した様式でガラス面と相互作用していることを示唆しており,MDPのアミノ窒素のπ型孤立電子対が水を媒介として間接的にガラス面のLewis酸型酸点(ホウ素の空軌道)と相互作用していると推定される。いい変えれば,この孤立電子対はホウ素の空軌道に結合した水分子から生ずるプロトンと相互作用していると思われる。

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