日本化学会誌(化学と工業化学)
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硫酸再賦活活性炭素繊維による湿空気中NOの室温アンモニア還元
持田 勲河野 静夫藤津 博前田 豊広
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1992 年 1992 巻 3 号 p. 275-281

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抄録

著者らは,硫酸賦活活性炭素繊維(ACF)が室温で低濃度のアンモニアを吸着除去し,脱臭剤として働くことを先に報告した。また,ACFに吸着したアンモニアは室温でNOと反応して脱離し,ACFのアソモニア吸着能が再生されることも見いだしている。つまり,硫酸賦活ACFが室温でNO+NH3反応を促進できることを示している。しかし,ACFの種類あるいは賦活条件によって,湿度による阻害効果を強く受けることも認められた。
本研究は,硫酸賦活したピッチ系,PAN系,フェノール樹脂系活性炭素繊維上の室温でのアンモニアによる還元脱硝反応を調べた。
室温では空気中の湿分がNO-NH3反応を阻害することが予想されるので,ACFの前駆物質,再賦活条件などを変え,水蒸気のNO-NH3反応に対する阻害効果についても試験した。各ACFとも0硫酸賦活処理によって還元脱硝活性が顕i著に増大する。とくにピッチ系活性炭素繊維(OG-5A)は,処理温度/時間が400℃/4hの処理条件下で室温反応において一番高い活性を示し,しかも湿度100%の大気中でも活性を維持できることを見いだした。一方,他のACFは高湿分下ではほとんど脱硝活性を失った。つまり,ACFの種類あるいは賦活条件によって,水分による阻害効果を強く受けることが認められた。NOの室温吸着能を調べたところ,いずれのACFも数ml/g以下の小さい容量を示す。吸着容量は湿度の増加によっていちじるしく減少するが,ピッチ系ACFにおける減少は一番少なく,高湿度空気中での高活性と対応している。

前駆物質の種類,硫酸再賦活処理法による脱硝能および水蒸気の阻害効果のいちじるしい変化はTPDによるCO,CO2の生成量から推定したACF表面の酸素官能基と対比して議論できる。400℃,4時間で再賦活したピッチ系ACFのもつ最も高い活性は定性的には高いアンモニア吸着能,NO吸着能および疎水性を発現できる表面の酸素官能基の種類および量によると理解できた。

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