1992 年 1992 巻 8 号 p. 824-829
テトラヒドロチオフェンやジエチルスルフィドのような環状および非環状スルフィドは,有機相中の塩化ベンジルと,これに接する水相中のチオシアン酸カリウムとの求核置換を触媒することを見いだし,反応機構を検討した。スルフィドは有機相中で塩化ベンジルと反応してスルホニウム塩を生じ,これが水相に移動してチオシアナートイオンの求核置換を受ける。ここでスルフィドは基質と反応してイオン性の中間体を形成することによって基質を水相へ運ぶ。すなわち,相関移動触媒として機能する。一方,ポリ(クロロメチルスチレン)の求核置換反応では,有機相にあるポリマー側鎖上に生じたスルポニウム塩は,対アニオン交換により水相からチオシナートイオンを有機相へ取り込み,求核置換反応は有機相で進行する。
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