日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
ホウ酸水溶液中におけるα-D-グルコースの変旋光
荒井 健一郎
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 1992 巻 8 号 p. 830-833

詳細
抄録

ホウ酸水溶液にα-D-グルコースを添加すると,溶液の電気伝導度がいったん著しく増大し,その後経時的に低下することを認め,これをα-D-グルコースが変旋光によってβ-D-グルコースになり,αホウ酸との錯体形成能が低下することによると説明した。このホウ酸水溶液中におけるα-D-グルコースの変旋光速度を測定し,この速度は一定の飴翫グルコ-ス濃度において,ホウ酸濃度の増加にしたがっていったん増加し,その後極大を経て減少することを認めた。この変旋光速度のホウ酸濃度依存性について,1)ホウ酸はα一D一グルコースのみと錯体を形成する,2)α つ一グルコースとホウ酸との問の錯体形成によって生じたオキソニウムイオソの触媒作用によってα-D-グルコースの変旋光が促進される,および3)錯体を形成したα-D-グルコースは変旋光を行わない,という仮定を置いて変旋光速度を表す理論式を導いた。この理論式による変旋光速度の算出値と実測値を比較し,この理論式がホウ酸水溶液中におけるα-D-グルコースの変旋光速度を近似的に表現していることを確認し,前述の仮定がほぼ正しいものと結論した。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top