日本化学会誌(化学と工業化学)
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単純塩の存在下におけるヒドロキシアパタイトの非化学量論的溶解
嶋林 三郎松本 美穂
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1993 年 1993 巻 10 号 p. 1118-1122

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抄録

2種のヒドロキシアパタイト(HAP)試料(A),(B)を種々の濃度の塩化ナトリウム(NaCl),酢酸ナトリウム(NaAc),あるいは硫酸ナトリウム(Na2SO4)水溶液に懸濁させ(添加濃度2g/dl),溶解平衡に達したのち溶出したリン酸イオン濃度[Pi]とカルシウムイオン濃度[Ca2+]および母液のpHを調べた。[Pi]増大におよぼす添加電解質の作用の強さの序列はNa2SO4>NaAc>NaClとなり,[Ca2+]増大におよぼす添加電解質の序列は逆にNaCl>NaAc>Na2SO4となった。また懸濁液のpH増大におよぼす電解質の序列は[Pi]の場合と同じであった。これらは2種の試料に共通してみられたのでHAPの特性であると結論した。これらの現象はSO42-あるいはCH3COO-とHAP表面のPO4 3-とのイオン交換,Na+とHAP表面のCa2+とのイオン交換,溶出したイオン種とHAP粒子表面によるpHに対する緩衝作用によって説明された。SO43-とPO43-,Na+ とCa2+はそれぞれ電荷は異なるがイオンサイズが似ているためにイオン交換が容易であったと考えられる。SO42-がHAP表面に対して親和性の高いことはHAP粒子のゼータ電位の測定によっても確かめられた。

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