日本化学会誌(化学と工業化学)
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嫌気性汚泥からの重金属イオンの除去・回収
白樫 高史柿井 一男田村 寿康栗山 光央
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1995 年 1995 巻 10 号 p. 830-837

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抄録

重金属イオン含量の高い嫌気性汚泥からの重金属イオンの抽出方法および抽出液中の重金属イオンの除去・回収法を検討した.嫌気性汚泥としては,排水処理場沈殿池の堆積物をタソクに保存しておいたものを使用した.この嫌気性汚泥から重金属イオンを抽出するためには汚泥を好気性化することが有効な手段であり,好気性化した汚泥からは酸あるいは配位子添加によってCu2+, Cd2+, Pb2+,Zn2+の50-100%が抽出された.汚泥の好気性化に伴い溶解度の小さい硫酸鉛が生成するため,酸による抽出ではPb2+の溶出性は小さかったが,抽出液中の重金属イオンは中和沈殿法で容易に除去・回収できた.好気性化した汚泥懸濁液にニトリロ三酢酸(NTA)を添加して電解処理を行った結果,重金属イオンの汚泥からの抽出と抽出液からの除去・回収が同時に効率良く行われることが示された.また,嫌気性汚泥懸濁液にNTAを添加し,通気しながら電解処理を行うことによっても好気性化した汚泥と同様な結果が得られた.この電解法は固液分離の必要がなく,嫌気性消化汚泥などの他の汚泥についてもその処理を容易にする方法として有効な手段になり得るものと考えられる.

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