日本化学会誌(化学と工業化学)
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クロミア架橋フッ素雲母の生成に及ぼす層電荷の影響
松倉 清治藤田 隆之田草川 信雄北島 圀夫
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1996 年 1996 巻 5 号 p. 441-448

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抄録

精密に細孔特性を制御したクロミア架橋フッ素雲母を合成する研究の一環として,イオソ交換容量およびピラー密度を規定する層電荷に着目し,層電荷の異なるLi+交換型テニオライト系合成フッ素雲母[LixMg3-xLixSi4O10F2(x=O.8,0.5)]を調製条件の異なる各種の多核ヒドロキソクロム(III)溶液と反応させ,層電荷が挿入クロム(III)イオン種およびクロミア架橋フッ素雲母の性質に及ぼす影響を検討した。その結果,層電荷が大きいフッ素雲母にはCr(III)単量体やオリゴマーのような単位陽電荷あたりの断面積が小さいクロム(III)イオン種が挿入されやすいのに対し,層電荷が小さいフッ素雲母にはかさ高く陽電荷密度の小きい高重合度のヒドロキソクロム(III)ポリマーイオン種が挿入されやすくなることが判明した。また,挿入クロム(III)イオン種のイオン交換選択性は,層電荷の大きさばかりでなく,用いる溶液中に存在する各クロムイオン種の相対含有率にも依存することが明らかになった。層電荷が大きい雲母から得られる架橋体は,200~300℃ 加熱時にはミクロ細孔が生成し,層電荷が小さい架橋体に比べ大きな比表面積と細孔容積を示した。これに対し,層電荷が小さな雲母から得られる架橋体は,よりかさ高いポリマー種が挿入される結果,底面間隔値が大きく,かつ耐熱性も高くなり,層電荷の大きな架橋体に比べより高温まで比較的大きな比表面積と細孔容積を維持した。

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