日本化学会誌(化学と工業化学)
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N-(2,4,6-トリブロモフェニル)マレイミドの合成反応
喜多 裕一高橋 由幸岸野 和夫中川 浩一
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1996 年 1996 巻 5 号 p. 471-476

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抄録

無水マレイン酸(MAN)と 2,4,6-トリブロモアニリン(TBA)から N-(2,4,6-トリブロモフェニル)マレイミド(TBPMI)を合成する工業的生産の開発を念頭において研究を行った。MAN とアニリン(ANL)から熱フェニルマレイミド(PMI)の前駆物質である N-フェニルマレイソアミド酸(PMA)が収率良く得られるが, N-(2,4,6-トリブロモフェニル)マレイソアミド酸(TBPMA)は,これよりもと厳しい条件下においてさえも合成することはできなかった。さらに,オルトリン酸を触媒とすればキシレソの還流条件下で PMI を高収率で得ることができるが,同条件で TBPMI はきわめて低い収 ο-率でしか得ることができなかった。しかし,溶媒を ο-キシレンと同様の不活性な溶媒であるが沸点が約 20℃ 高いメシチレンを用いて,その還流条件下の 168℃ で反応させると,高い収率で TBPMI が得られることが明らかとなった。
この一連の反応における自由エネルギー(ΔG)変化に関する考察によって,エネルギー障壁の最も高い部分は一段目の第一級アミンと MAN との反応から N-置換マレインアミド酸を合成する部分にあることが推定され, TBPMA 生成反応の ΔΔG は, PMA の生成に比べ約 2.6 倍以上大きく TBPMA の生成が PMA に比べて困難であることが示唆される。この計算結果により上記実験結果をよく説明できるとともに,触媒として加えたオルトリン酸は, TBPMI の合成用触媒だけでなく TBPMA の合成触媒としても働いていると考えられる。この反応によって得られた TBPMI の融点は 142℃ であり, IR, 1H-NMR によってその構造を確認した。

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