ワキシコーンスターチ糊液の老化を示差走査熱量測定(DSC)と粉末 X 線回折を用いて研究した。DSC は -15℃ から 15℃ ,および 30 から 100℃ の温度範囲で測定した。糊化直後の糊液では 0℃ 付近に鋭い吸熱ピークが観測され,これ以外に吸熱は観測されなかった。長期放置して糊液が老化すると 50℃ 付近に再糊化の吸熱ピークが観測され,また 0℃ 付近の吸熱ピークは二つに分かれた。これら両者の吸熱ピークは互いに関連しており,ともに老化の結果であると考えられる。一方,糊液を凍結させて放置したところ, 72 日経過しても老化に起因する吸熱ピークは観測されなかった。また,老化した糊液中のワキシコーンスターチの X 線回折を測定すると B 型の結晶構造の回折線が観測された。また 3 種類の濃度の糊液を調製し,老化挙動を比較したところ,老化の速度は著しく影響を受けたのに対し,デンプン乾物量換算した吸熱量はほぼ一定の値になった。このことは糊液老化の機構が濃度により影響を受けないことを示している。これらの結果から糊化,老化の際のワキシコーンスターチの分子構造の変化を提案し,模式図として示した。
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