日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
LB 法ならびに包括法により調製した固定化血清アルブミン膜による基質認識 ―D,L-トリプトファンに起因する円偏光二色性応答―
原 万里子樋口 真弘箕浦 憲彦大内 将吉曹 鍾守赤池 敏宏樋口 亜紺
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1996 年 1996 巻 5 号 p. 483-490

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抄録

ポリ(α-アミノ酸) Langmuir-Blodgett(LB) 膜にウシ血清アルブミン(BSA)が物理吸着された BSA 固定化 LB 膜を調製した。BSA 固定化 LB 膜を 0.01M,D- ならびに L- トリプトファン水溶液に浸漬させ,円偏光二色性(CD)スペクトル変化を測定し,基質認識性を観察した.D-トリプトファン水溶液に BSA 固定化 LB 膜を浸漬させると,膜中のα-ヘリックス含量が減少し,L-トリプトファンの場合には,α-ヘリックス含量は増加した。BSA を含まない LB 膜では,基質応答性は観察されないことから, CD スペクトルの基質応答性は, BSA 固定化 LB 膜中のアルブミンホストと水溶液中のトリプトファンゲストとの特異的結合に基づくアルブミンの立体配座変化に起因すると考察した。更に,トリプトファン結合に起因する BSA のα-ヘリックス含量変化は, BSA 固定化 LB 膜と BSA 包括膜並びに BSA 水溶液とは異なり,正反対の増減の仕方が観察された。共焦点レーザー顕微鏡測定から, BSA 固定化 LB 膜中の BSA は配向していることが明らかとなり,ランダムに BSA が存在する水溶液系と包括膜系とは異なった CD スペクトル変化を示したと考察した。

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