日本化学会誌(化学と工業化学)
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2-(2-置換エテニル)-8-キノリノールを用いるシクロメタラトパラジウム(II)錯体の合成とキレート環の安定性に及ぼす隣接置換基の立体相互作用
大淵 真一北村 千寿前川 嘉彦George R. NEWKOME米田 昭夫
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1999 年 1999 巻 3 号 p. 151-160

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抄録

エテニル基の2位にかさ高いビス置換基を有する2-エテニル-8-キノリノールをKnoevenagel反応により合成した。マロン酸エチル由来のビスエステル基プロトンの化学シフトはシス位,トランス位とも大きく低磁場側にシフトした.これは,X線構造解析においてエテニル基の2位に結合したエステルカルポニル基がキノリノールヒドロキシ基と水素結合をしていることが認められることより,キノリノール骨格による電子求引効果が大きいためと考えられた。塩基存在下に二価パラジウムとの反応をメタノール溶媒中で行つたところ,単座配位子をビリジンとした場合に収率60%程度でPd-C単結合をもつシクロメタラト錯体が得られた.ピリジンはトリフェニルボスフィンと容易に配位子交換反応を行い,結晶性の良いPd(皿)-P錯体を形成した.この場合には,キレート環のα位,β 位および単座配位子のトリフェニル基は隣接することになる。本報ではβ位に大きさの異なる置換基を導入し,置換基間の立体相互作用から生じるジアステレオマー特性などを,NMRを測定することによつて明らかにした。またそれに伴う平面錯体構造のひずみをX線構造解析結果から論じ,Pd-C(sp3)結合をもつシクロメタラト環の安定性について検討した。

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