1999 年 1999 巻 3 号 p. 161-168
1-アルキルあるいは1-ベンジル-1,4-ジヒドロニコチンアミド(以後,それぞれRNAH,BNAHと略記)の熱または光による酸化反応を,未修飾シクロデキストリン(CyD)または3位や6位を3-クロロ-1,4-ジオキン-2-ナフチルアミノ基(ナフトキノン残基:Q)で修飾したCyD(QxCyD;x=α,β,γ)の存在下で速度論的に検討した.α-とβ-CyDは,BNAHあるいは置換ナフトキノン(NQ)分子と反応不活性な二元包接錯体しか生成しないが,γ-CyDはBNAHに対して等モル以下の濃度で低反応性の三元包接錯体を生成した.QcyD類によるBNAH酸化の反応速度の順(kobs/10-4 s-1)は,6-DQβCyD(4.1)>3-QβCyD(3.5)>6-QβCyD(2.5)>6-QγCyD(2.2)>3-QαCyD(1.9)であった.この順序は基質の1位のアルキル鎖長に依存せず,モノ置換体の中では3-QβCyDの反応が最も速かつた.
一方,3-カルバモイル窒素にベンジル基を有する1-エチル-1,4-ジヒドロ-N-ペソジルニコチンアミド(EBNAH)の酸化反応に対するkobs(10-4 s-1)の順は,6-DQβCyD(3.9)>6-QγCyD(2.7)>6-QβCyD(2β)>3-QβCyD(1.7)>3-QαCyD(1.1)であつた.以上より,RNAH(BNAH)に対してはβ-CyDの空孔が,EBNAHに対してはγ-CyDの空孔が包接錯体形成には最も適合していることが判明した.
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