抄録
雨水・露水中におけるヒドロキシルラジカルの光化学的生成および消失反応機構について,1997年6月から1998年6月までに採取した試料を用いて研究を行った.ヒドロキシルラジカルの発生源として,雨水では,硝酸イオンや亜硝酸イオン以外に起源があること,また露水では,ほとんどすべて亜硝酸イオンから生成されていることがわかった.雨水では,OHラジカル生成速度は春に速く,露水では,春・秋に速いという傾向があつた.雨水中でのOHラジカルの消失速度定数(Σkscavenger, OH[scavenger])は,(020-1.58)×105s-1で,露水中では,(2.11-4.63)×105 s-1であった.よって,雨水・露水におけるoHラジカルの平均寿命はそれぞれ20.6,3.2μsと推定された.このことより,液相で生成されるOHラジカルが気相へ拡散する可能性はほとんどない.また,雨水では,ほとんどのOHラジカルが,無機イオン以外との反応により消失していることが明らかとなり,主に溶存有機化合物によって消失していることが示唆された.それに対し,露水中では,平均59%が亜硝酸イオンとの反応により消失しているものと推定された.また,定常状態におけるOHラジカルの濃度は,液相中の光化学反応のみをOHラジカル起源と仮定すると,雨水・露水ともに10-15M(1M=1mol dm-3)程度と推定された.