日本化学会誌(化学と工業化学)
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1999 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 今泉 公夫, 名取 至
    1999 年1999 巻5 号 p. 293-304
    発行日: 1999/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルキルリチウムとアミンとからなる有機金属錯体を開始剤として用いることにより,1,3-シクロヘキサジエンがリビングアニオン重合活性であることを見いだした.得られたポリ(1,3-シクロヘキサジエン)(PCHD)は分子量,分子量分霜の劇御された単分散ポリマーであった.PCHDの二次元1HNMR測定から,1,2-PCHD単位および1,4-PCHD単位の含有率を求め,開始剤としてのアルキルリチウム/アミン錯体の種類やリチウム/アミン組成によつて,1,2-/1,4-単位が0/100から50/50の範囲で変化することが明らかになった.1,2-PCHD単位が増大するにしたがって,PCHDのガラス転移温度(Tg)は高温度側にシフトし,それに対応して,熱変形温度や曲げ弾性率が増大した.PCHDを水素化して得られるポリシクロヘキセン(PCHE)はさらに高熱変形性,高剛性であった.CHDのリビング重合性を応用し,CHDおよびブタジエン(Bd)とからなるトリブロック共重合体を合成した.CHD/Bd組成を変化させたトリブロック共重合体は,種々のミクロ相構造を呈し,さらに水素化トリブロック共重合体は非水素化体の場合よりミクロ相分離構造が微細化していることが見いだされた.このことから,バード相(CHD由来)およびソフト相(Bd由来)の相溶性が向上することが示唆された.
  • 猪熊 精一, 西村 淳
    1999 年1999 巻5 号 p. 305-316
    発行日: 1999/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    スチレン誘導体の分子内[2+2]光付加環化反応により,クラウンエーテルとシクロフアンの融合した化合物を高効率に合成する方法を開発し,クラウノファンと命名した.固-液抽出実験により,原型のクラウノファンの高いリチウムイオン親翻性を見いだした。そこで,いくつかの知見に基づいてリチウムイオン選択性の更なる向上を目指し,クラウノブアンの構造へ簡便かつ適切な修飾を加えた結果,リチウムイオンを独占的かつ定量的に抽出することに成功した。また,リチウムイオンに適合するクラウンエーテル環を2個有するクラウノファンを合成し,これを担体として二塩基酸ニリチウム塩の選択的液膜輸送に成功した。さらに,硫黄原子あるいは窒素原子をクラウンエーテル環内あるいは側鎖に有するクラウノブアンの合成にも成功した。その中で,ビリジン環を芳香環の側鎖に持つものが,銀イオンを独占的かつ高効率に抽出することを確認した.一方,クラウンエーテル部位に第三級アミンを有するクラウノブアンをγ-CD存在下水中で合成することに成功した。
  • 岩元 和敏
    1999 年1999 巻5 号 p. 317-321
    発行日: 1999/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    鏡像異性体発生を説明する反応モデルについて,その定常状態を調べ,自発的に光学活性な状態へ移行する条件を明らかとした.この反応系では,鏡像異性体を含む自己触媒反応が競争する結果として光学活性な状態が出現し,鏡像異性体のいずれが優勢になるかは偶然により支配される.
  • 清島 隆太, 古曵 重美, 松嶋 茂憲, 奥 正興
    1999 年1999 巻5 号 p. 323-327
    発行日: 1999/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    In2O3:Lix(x=0-1.0)を合成し,In2O3へのLi添加効果を明らかにした.Li添加により,In203立方格子の格子定数が10.116Åから10.163Åに増大し,光吸収エネルギーが2.72evから2.68eVに減少した。x=0.5-1.0の範囲では格子定数と光吸収エネルギーはそれぞれ一定(10.163Aと2.68eV)であった。強結合近似エネルギーバンド計算より,In203結晶の8aや16c空サイトにLiを導入すると,完全結晶と比較して,いずれも価電子帯と伝導帯間のエネルギーギャップが減少することがわかった.これは,Li添加による光学ギャップの減少を支持している。In2O3:Lix(x=0,0.2,1.0)の内殻電子束縛エネルギーに変化は認められなかった.しかし,Li添加量の増大に伴う価電子帯全域にわたるスペクトル強度の増大が認められ,これは8aサイトや16c空サイトに2個Liを導入したバンド計算とよく一致している。
  • 郡司 天博, 鈴木 慶宜, 久野 義夫, 阿部 芳首
    1999 年1999 巻5 号 p. 329-333
    発行日: 1999/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジエチルエーテル,テトラヒドロフランあるいはピリジンを溶媒とするトリイソシアナト(メチル)シランとアンモニアとの反応によりイソシアナト(メチル)ポリシラザンが得られた.これを再沈殴すると溶媒に可溶な白色粉末が単離された。この化合物はMeSi(NH)X/2(NCO)3-X(x=1,2,3)の構造単位から成る数平均分子量が500程度のポリシラザンで,容易に縮合し溶媒に不溶になった。しかし,このイソシアナト(メチル)ポリシラザンはアミンと反応し,軟化点およびえい糸性を有し縮合に安定なポリシラザンのシリル尿素誘導体となることがわかった。
  • 新垣 雄光, 三宅 隆之, 柴田 美智恵, 佐久川 弘
    1999 年1999 巻5 号 p. 335-340
    発行日: 1999/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    雨水・露水中におけるヒドロキシルラジカルの光化学的生成および消失反応機構について,1997年6月から1998年6月までに採取した試料を用いて研究を行った.ヒドロキシルラジカルの発生源として,雨水では,硝酸イオンや亜硝酸イオン以外に起源があること,また露水では,ほとんどすべて亜硝酸イオンから生成されていることがわかった.雨水では,OHラジカル生成速度は春に速く,露水では,春・秋に速いという傾向があつた.雨水中でのOHラジカルの消失速度定数(Σkscavenger, OH[scavenger])は,(020-1.58)×105s-1で,露水中では,(2.11-4.63)×105 s-1であった.よって,雨水・露水におけるoHラジカルの平均寿命はそれぞれ20.6,3.2μsと推定された.このことより,液相で生成されるOHラジカルが気相へ拡散する可能性はほとんどない.また,雨水では,ほとんどのOHラジカルが,無機イオン以外との反応により消失していることが明らかとなり,主に溶存有機化合物によって消失していることが示唆された.それに対し,露水中では,平均59%が亜硝酸イオンとの反応により消失しているものと推定された.また,定常状態におけるOHラジカルの濃度は,液相中の光化学反応のみをOHラジカル起源と仮定すると,雨水・露水ともに10-15M(1M=1mol dm-3)程度と推定された.
  • 上野 廣, 今西 邦彦, 植木 聡, 小原 忠直
    1999 年1999 巻5 号 p. 341-345
    発行日: 1999/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高性能プロピレン重合用の多孔質三塩化チタン触媒の調製法を蘭発した.四塩化チタンを高濃度のアルキルアルミニウムで還元することで,δ型へ結晶変態しやすいα型三塩化チタンを選択的に生成させることができる。さらに,ジブチルエーテル/ヘキサクロロエタンの混合物による処理で,ジブチルエーテルをチタンに対し等モル量以上,ヘキサクロロエタンをチタンに対し0.8モル量以上使用することで.α型三塩化チタンが結晶変態を起こして,高活性なプロピレン重合用多孔質δ型三塩化チタンを得ることができた。このようにして得られた触媒は従来の多孔質δ型三塩化チタン触媒より,15%以上高活性であった。本活性化処理において,塩素ラジカルがα型三塩化チタンからδ型三塩化チタンへの結晶変態に関与していると考えられ,この塩素ラジカルの量と安定性が触媒性能の向上には重要であると考察した。
  • 松崎 徳雄, 日高 幹雄, 田中 秀二, 西平 圭吾
    1999 年1999 巻5 号 p. 347-354
    発行日: 1999/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    炭酸ジメチル気相合成触媒の担体としてアルミン酸リチウム化合物の多孔質体を開発した.この多孔質リチウムアルミネートは,活性アルミナ成形体の細孔内にリチウム塩を含浸担持させ800℃ 熱処理することによって調製した.その結晶構造はX線回折,固体MAS-NMRより,酸素八面体配位サイトにLi+ イオンとAl3+イオンが入り酸素四面体配位サイトに他のAl3+イオンが入った逆スピネル結晶構造であることが確認された.本アルミン酸リチウムにPd-Cu-Clを担持させた触媒は亜硝酸メチルとCOの気相接触反応において,炭酸ジメチル生成に高い活性と高い選択性を示した.本アルミン酸リチウム担体の物性を測定した結果,直径が数十から数百Åの範囲である細孔分布を有していた.また表面酸点の量,強度は原料の活性アルミナと比べると少なくかつ弱いものであつた.本反応においてアルミン酸リチウム担持触媒が高いDMC生成活性を示した要因として,アルミン酸リチウム担体が適度な表面酸塩基特性と適度な細孔構造を有していることが考えられる.
  • 竹矢 晴彦, 鈴木 洸次郎, 佐々木 健
    1999 年1999 巻5 号 p. 355-358
    発行日: 1999/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    5-アミノレブリン酸(ALA)は選択的除草作用があり,低濃度では植物成長促進作用を有する有用な物質である.工業的原料である2-フルアルデヒドから既知方法によって容易に得られる1,5-ジヒドロキシー2一ピリドン(DHPy)を直接原料として,ピペリジン-2,5-ジオン(PDO)を経由し,ALAを合成する研究を行った.PDOの加水分解でALAが得られることはすでに知られている.
    DHPyをエタノール中5%パラジウム-炭素を触媒とし,水素雰囲気で24時間加熱還流して還元的脱ヒドロキシル化を行うと,PDOが14%,5-ヒドロキシ-2-ピリドン(HPy)が28%生成した.塩基性生成物による触媒の不活性化を考え,溶媒に希塩酸または酢酸を添加してみた.その結果塩酸はPDOを減少させ,酢酸の添加はPDOの収率を増加させた.さらに条件を検討した結果,酢酸溶媒で24時間窒温還元するとPDOは収率65%に向上し,HPyは21%となつた.またこの反応の副生成物であるHPyをメタノール中同触媒で室温還元し,75%収率でPDOが得られたので,PDOの収率は合計80%になった.
    PDOを希塩酸で加水分解すると,目的のALA塩酸塩を60%収率で単離することができた.
  • 川島 正敏
    1999 年1999 巻5 号 p. 359-361
    発行日: 1999/05/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Protonation of the metal diphenylphosphide formed by the reaction of chlorodiphenylphosphine with a representative metal such as magnesium, aluminium, zinc, or tin at room temperature gave diphenylphosphine in satisfactory yields. Especially activated zinc in THF was found to be the most effective system than other combinations. Transition metals also reacted with chlorodiphenylphosphine but were inferior to the representative metals except for the case of manganese as the reductant. Dialkylphosphines such as dicyclohexylphosphine and di-t-butylphosphine were also produced under the similar conditions from the corresponding chlorophosphines in 67% and 31% yields, respectively.
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