認知神経科学
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シンポジウムⅡ-03
精神疾患の診断ツールとしての光トポグラフィー
野田 隆政中込 和幸
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2012 年 14 巻 1 号 p. 35-41

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抄録

精神疾患の患者数は増え続け、現在323万人と4 大疾病それぞれの患者数よりも多く、2011年に精神疾患は、医療計画に記載すべき疾患に追加され5 大疾病となった。増え続ける精神疾患であるが、診断を問診に頼らざるを得ないことから、客観的な診断が得られない問題点も指摘され、客観的な診断・評価ツールの開発が望まれていた。近赤外線光トポグラフィー(near-infrared spectroscopy:NIRS)は近赤外光を用いており、非侵襲性、低拘束性、簡便に検査ができるという他の脳機能画像検査よりも優れた特徴を持つ一方で、光路長の問題や深部構造までは計測ができないという短所も併せ持つ。簡便に検査ができ、低拘束性、非侵襲性というストレスが少ない点は、精神疾患患者の臨床検査として大きな長所と考えられる。さらに、精神疾患を対象とした研究結果から、診断補助としての有用性が評価され、2009年4 月に先進医療「光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の鑑別診断補助」として承認され、2012 年3 月現在14 施設で実施している。実際の臨床においては、診断補助ツールとしての有用性だけでなく、患者と共有できる客観的な情報がもたらされることは大きなメリットである。とくに患者との治療関係において、こうした情報が共有されることによって、病識の獲得や、病状の理解につながり、患者の積極的な治療参加がもたらされることが期待される。

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