認知神経科学
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シンポジウムIII 発達障害の診断と治療:生理学的指標に基づいた知見
ADHD児における実行機能の検討:干渉抑制機能の観点から
安村 明髙橋 純一福田 亜矢子中川 栄二稲垣 真澄
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2015 年 16 巻 3+4 号 p. 171-178

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抄録

【要旨】近年、注意欠如・多動性障害(ADHD)の中核症状として実行機能障害が着目されている。我々はこれまでにADHD児の特性を抽出するため、実行機能のうち意味干渉や色干渉に対する抑制機能について行動学的ならびに前頭部脳機能を検討してきた。今回、多施設共同研究により、脳機能定量評価法がADHDの診断補助に有用か否か検討した。ADHD児38例(年齢:10.4±2.3、12例服薬)及び年齢・性別・利き腕・及び非言語性知能をマッチング(p>0.1)したTD児46例(年齢:10.2±1.7)を解析対象とした。課題は色干渉抑制機能を評価する逆ストループ課題(RST)を用いて、課題遂行中の前頭前野の活動を近赤外線分光法(NIRS:OEG-16)により計測した。その結果、RST課題において、ADHD児はTD児と比較して干渉率が高いことが判明した(p<0.01)。ADHD群内では、干渉率と不注意の重症度(r=0.48、p<0.01)及び多動・衝動性の重症度(r=0.40、p<0.05)とにそれぞれ正の相関関係がみられた。また、RST課題中の脳活動において、右外側前頭前野脳活動がTD児と比べてADHD児で有意に低下した(p<0.05)。臨床診断結果に基づいて、干渉率及び前頭前野賦活量を指標として判別分析を行った結果、比較的高い判別率(79.8%)が得られた。ADHDの重症度と行動指標に相関関係があり、抑制課題遂行中の右外側前頭前野の脳活動がTD児と比較して低い点から、ADHDの臨床症状が線型性を持って予測できることが示唆された。より判別率の高いモデルを構築するために、今後は参加者の増加や指標のさらなる選定を行う必要性がある。

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© 2015 認知神経科学会
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