2016 年 18 巻 3+4 号 p. 154-161
【要旨】発語失行(AOS)について筆者が重要と考える事項について考察した。AOSの責任病巣が中心前回であることは多くの証拠が物語っているが、基底核から放線冠にかけての皮質下病変でもAOSにほぼ一致する病像を観察することがある。AOSと運動障害性構音障害、とくに失調性構音障害との鑑別は意外と難しく、AOSの特徴として従来から重要視されていた構音の誤りの非一貫性はAOSの決定的な特徴とは言えない。変性疾患のAOSの特徴を述べ、進行性非流暢性失語の経験からも、AOSは非流暢性発話の重要な要因ではあるが、その他の言語学的要因も非流暢性に関与していることを述べた。