2017 年 19 巻 1 号 p. 7-13
【要旨】発達障害の幼児への気づきには、発達の遅れはないが落ち着きがない、あるいは対人関係に問題があるといった視点を乳幼児健診に導入する必要がある。健診の中で、遅れの有無だけでなく、認知行動発達の特性を、短時間に見逃すことなく、診察する方法の追及が求められている。そこで5歳児健診の診察では2つの工夫を行った。一つ目は診察自体の構造化を行うことである。2つ目は構造化された診察で所見が認められた場合には、インタビューによって、その所見が別の場面でも同様に認められるという一貫性を確認するという構造化である。
診察は ① 会話、② 動作模倣、③ 協調運動、④ 概念形成、⑤ 安静閉眼というカテゴリーに分けて行う。その中に共感性を診たり、大人への従順性を診たり、大脳の成熟を推測する神経学的微徴候検査や自己抑制を診る項目を入れ込んだ。
インタビューは、言語発達を中心とした質問項目、社会性や対人関係を尋ねる質問項目、落ち着きのなさや衝動性を尋ねる質問項目の3タイプである。
また5歳児健診と事後相談で一つのパッケージであることを提唱した。5歳児健診の後に育児相談、発達相談、教育相談の3つの事後相談を充実させると、療育機関や医療機関で診察が必要な小児の数を抑制できることも判明している。
5歳児健診により不登校などの学校不適応が減少したという報告があり、その必要性はますます高まっている。