2017 年 19 巻 3+4 号 p. 125-132
【要旨】神経心理学的評価は、対象者のパフォーマンスを測定することで広汎な認知機能の状態を査定する技法である。その対象領域には記憶、注意、処理速度、推論、判断、問題解決、空間認知、言語等が含まれる。欧米諸国では、神経心理学的アセスメントは神経科学と心理測定学に関して博士課程レベルのトレーニングを受けた臨床神経心理学者が担当する。しかし、わが国の神経心理学は、主に神経内科医や精神科医によって発展させられてきた経緯がある。そのため、近年神経心理学的アセスメントの需要が増加しているにもかかわらず、実用的な検査が少ないという問題がある。また、様々な欧米の検査が邦訳され使用されているが、その妥当性や信頼性、有用性は確認されていない。わが国の神経心理学が今後も発展を続けていくためには、医学と心理学がそれぞれの専門性を尊重した新しい協力関係を構築することが必要である。