【要旨】脳卒中診療において神経心理学の知識と経験はどのように生かされているのか、具体例をあげて論じる。1例目はpost-stroke seizure、特にlate-onset seizure (late seizure)の発症例である。Seizureは日本神経学会の神経用語集では「発作」とされている。Late seizureはconvulsion(痙攣)を伴って発症することもあれば、痙攣を伴わず失語だけで発症するaphasic seizure(失語発作)などもある。2例目は症候性の左内頸動脈起始部狭窄があり、血行力学性機序により失語を呈した症例である。脳卒中診療の急性期から慢性期にかけて見え隠れする症状を注意深く観察し、神経心理学的所見を引き出すことによって病態の理解が深まり、診療の質も高まることを示す。