認知神経科学
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総説
脳機能をみつめるてんかん診療
重藤 寛史
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2019 年 21 巻 1 号 p. 10-20

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抄録

【要旨】てんかん診療を行う時は常に脳機能と向き合っている。発作症候と脳波所見から脳のどの部位に過剰興奮が存在し、どの部位から症状が出現してくるのかを推定し、発作を分類する。意識消失を伴う発作か否かは、発作分類だけでなく患者の社会的活動においても重要となる。てんかんの原因が何であるのかを考え、発作の分類のどこに位置するのかを考えて抗てんかん薬の組み立てを行う。内服薬で寛解しない難治性てんかんが3~4割存在し、多剤併用することにより脳機能自体が低下する。難治性てんかんに対してはてんかん手術も考える。てんかん手術の対象となる難治性てんかんの一番の適応は内側側頭葉てんかんであるが、もともと存在する記憶障害や側頭葉切除によって生じる記憶障害が問題になる。てんかん手術の成績で良好な結果が得にくいのはMRI画像で病変のない新皮質てんかんであり、運動感覚野や言語野などの重要部位にてんかん原性部位が推定される場合は手術を行っても寛解を得ることは難しい。患者はてんかん発作によって不利益を生じているが、不利益を生じる背景には偏見や脳機能障害だけでなく不適切な治療によるものもある。てんかん診療においては脳機能を見つめながら、患者にとってベストな治療を施し、患者背景も考慮した包括的な医療に取り組むことが必要である。本稿では、脳機能と向き合うことによって成り立つてんかん診療の実際を、具体的な症例を挙げながら解説する。

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