2009 年 24 巻 1 号 p. 146-150
目的:我々は今まで,空腹時インスリン値(fasting immunoreactive insulin :F-IRI)が糖尿病のみでなく生活習慣病全般と関連があることや,肥満が重要な因子であり,体重の増減に伴いF-IRIも変化することを報告してきた.また,F-IRIがインスリン抵抗性の指標であるhomeostasis model assessment of insulin resistance (HOMA-R)と強い相関があり,F-IRIがより簡便なインスリン抵抗性の指標となることを報告した.今回は肥満に関する因子の中で最もF-IRIに影響を持つ因子を再検討することを目的とした.
方法:対象は当施設での人間ドック・健診を受診し,F-IRIと内臓脂肪面積を共に測定した744名.年齢,性別や生活習慣病の項目にbody mass index (BMI),腹囲,体脂肪率,CTによる内臓脂肪面積,皮下脂肪面積,総脂肪面積を加えて,多変量重回帰分析を行った.
結果:単相関では内臓脂肪面積は皮下脂肪面積よりもF-IRIとの相関が大きかったが,重回帰分析では内臓脂肪,皮下脂肪の合計である総脂肪面積がF-IRIの最も強い規定因子となった.また,変化量の解析では,内臓脂肪面積に比べて皮下脂肪面積の変化量の方が,F-IRIの変化量との相関が強かった.
結論:内臓脂肪だけでなく,皮下脂肪も含めてインスリン抵抗性を考える必要性が示唆された.