人間ドック (Ningen Dock)
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ISSN-L : 1880-1021
24 巻, 1 号
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巻頭言
総説
原著
  • 小田 栄司, 河合 隆
    2009 年 24 巻 1 号 p. 36-43
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:欧米では肺活量はメタボリックシンドロームに関係して糖尿病の危険因子とされているが,日本には肺活量と糖尿病およびメタボリックシンドロームの関係を解析した報告が少ないので,日本人における肺活量とメタボリックシンドロームの関係を解析する.
    方法:日本人男性1880人,女性1079人を対象として,肺活量と糖尿病およびメタボリックシンドローム診断基準検討委員会が決めた診断基準によるメタボリックシンドロームJapanese metabolic syndrome(JMS)と日本人のための改定NCEP診断基準によって診断したメタボリックシンドローム metabolic syndrome(MS)との関係について解析した.
    結果:男性では%肺活量は非MS群に比べMS群で有意に低かった(p<0.0001)が,女性では差がなかった.糖尿病とMSとJMSの頻度は,男性では%肺活量の4分位数で分類した%肺活量最小群と比較して最大群で有意に低く,%肺活量の4分位数で分類した各群を比較すると%肺活量の低下に伴って増加したが,女性では差がなかった.%肺活量は,男性では高感度CRP,白血球数,alanine aminotransferase,中性脂肪,推定糸球体濾過量,心拍数,体脂肪率,空腹時血糖と有意な負の相関を示し,HDLコレステロールと有意な正の相関を示した.女性ではBMI,体脂肪率,腹囲と有意な正の相関を示し,高感度CRP,推定糸球体濾過量,心拍数と有意な負の相関を示した.
    結論:日本人男性では糖尿病とメタボリックシンドロームの頻度は%肺活量の減少に伴って増加するが,日本人女性ではそうではない可能性が示唆された.
  • 松下 啓, 安田 元, 高木 重人, 庄田 昌隆
    2009 年 24 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:高尿酸血症は内臓脂肪蓄積を基盤とするメタボリックシンドローム(MS)と関連することが知られている.日本のMS診断基準では腹囲を用いるが,内臓脂肪蓄積の評価としては腹部CTの方が望ましいとされている.そこで腹部CT法により血清尿酸値とMSの基本病態である内臓脂肪蓄積との関連について検討した.
    方法:当施設で2007年1月から12月までに腹部CTを施行した人間ドック受診者181名(男性100名,女性81名,平均年齢58.3±12.1歳)を対象とし,血清尿酸値をCT画像より得られた内臓脂肪面積の程度及びMSの有無別で比較した.内臓脂肪面積と血清尿酸値の相関を検討し,さらに高尿酸血症の危険因子に関する多変量解析を行った.
    結果:内臓脂肪面積正常群(n=113),異常群(n=68)の血清尿酸値は異常群の方が有意に高かった.同様にMS無群(n=151),MS有群(n=30)の血清尿酸値はMS有群の方が有意に高かった.またMSの構成因子(血圧高値,脂質代謝異常,空腹時高血糖)を有さない群,1個有する群,2個以上有する群の血清尿酸値は構成因子数が多くなるにつれて高くなった.内臓脂肪面積と血清尿酸値は正の相関が得られた.高尿酸血症に対する内臓脂肪蓄積(内臓脂肪面積100cm2以上)のオッズ比は2.748であり有意なリスクの増大がみられた.
    結論:血清尿酸値と内臓脂肪蓄積との密接な関連が示された.さらに血清尿酸値はMSの予測因子になりうる可能性があると考えられた.
  • 河合 昂三, 中源 雅俊
    2009 年 24 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的と方法:ドック受診者について,メタボリックシンドロームの基準としての腹囲を測定し,糖・脂質代謝や血圧の測定値,異常の頻度を調べ,動脈硬化性疾患リスクの指標としての腹囲について検討した.
    結果:Body Mass Indexと腹囲は正比例し,代謝異常や高血圧の頻度やリスク因子の保有からみた腹囲は女性では80cm,男性で85cmが相当し,これ以上の腹囲では代謝・血圧異常の頻度が増え,腹囲に男女差があった.更に体格を考慮し,腹囲・身長比でみると男女とも腹囲に関係なく0.5以上でリスク因子が増えた.
    結論:女性では腹囲は男性より低値で動脈硬化性疾患のリスクが高くなり,内臓脂肪以外の要素が代謝・血圧異常に関与している可能性が示唆された.また,単なる腹囲でなく体格を考慮した腹囲・身長比が有用であり,メタボリックシンドロームのスクリーニングとしては腹囲・身長比0.5以上が適当である.
  • 脇本 敏裕, 小島 真二, 藤井 昌史
    2009 年 24 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:特定健診・特定保健指導の開始に合わせ,川崎医科大学附属病院健康診断センターでは健康運動指導士を新たに採用し,保健指導体制を整えた.本研究では健康運動指導士が人間ドック受診者に対して実施した個別運動指導の分析を行い,健診施設における健康運動指導士の役割について考察した.
    方法:当センターで人間ドックを受診し,個別運動指導を受けた58名を対象とした.個別運動指導は医師および保健師の勧めやセンター内の掲示により周知し,受講は任意とした.運動指導は,具体的な実践方法および継続的な運動実践へのアドバイスを行った.また,運動指導受講者の行動変容ステージを分析した.
    成績:個別運動指導は,医師や保健師などの勧めによる受講者が53%を占めており,膝痛や腰痛など整形外科的な愁訴や骨粗鬆症の予防対策を望む者が多く,ストレッチや筋力トレーニングを指導した例が多かった.一方で日常生活での運動量増加など一般的な内容は,保健師が他の生活習慣の指導と合わせて行った.医師や保健師の勧めで個別運動指導を受講した者には関心期の者が多く,自ら希望して受講した者には維持期の者が多かった.
    結論:人間ドック受診後の保健指導では,医師や保健師,管理栄養士と協力し,対象者のニーズや行動変容ステージに応じて,継続可能な運動を指導する必要がある.
  • 小田 栄司, 河合 隆
    2009 年 24 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:自律神経機能障害は,メタボリックシンドロームの重要なメカニズムの一つと考えられているので,日本人における心拍数とメタボリックシンドロームとの関係を明らかにする.
    方法:男性2079人,女性1215人の人間ドック受診者を対象として,心拍数とメタボリックシンドロームに関連した危険因子,メタボリックシンドローム診断基準検討委員会が決めた診断基準によるメタボリックシンドローム(JMS),日本人のための改定NCEP診断基準によって診断したメタボリックシンドローム(MS),および糖尿病との関係について解析した.
    結果:男女とも,心拍数は非MS群に比べ,MS群で有意に高かった(男性p<0.0001,女性p<0.001).心拍数の4分位数で分類した心拍数最大群は,最小群と比較して,男女とも,MSとJMSの頻度が有意に高く(男性MS,男性JMSともp<0.0001,女性MS p<0.001,女性JMS p<0.01),男性では糖尿病の頻度も有意に高かったが(p<0.001),女性では差がなかった.心拍数は,男女とも,体脂肪率,血圧,空腹時血糖,中性脂肪,高感度CRP,白血球数,gamma glutamyltransferase,alanine aminotransferase,推定糸球体濾過量と有意に相関した.男性ではBMI,腹囲,HDLコレステロール,ヘモグロビンA1c ,%肺活量とも有意に相関し,女性では尿酸とも有意に相関した.
    結論:心拍数はメタボリックシンドローム関連危険因子と有意に関係し,心拍数の4分位数で分類した心拍数最大群は,最小群と比較して,男女とも,MSとJMSの頻度が有意に高く,男性では糖尿病の頻度も有意に高かった.

  • 小松 淳子, 折津 政江
    2009 年 24 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:2008年度に作成された日本人間ドック学会のガイドラインにおいて,呼吸機能の判定区分に日本呼吸器学会のCOPDの診断基準が導入された.その変更が与える影響に関して検討を試みた.
    対象と方法:2007年に当センターのドックを受診し呼吸機能検査を行った4050名について,旧判定区分と新判定区分による変化を調べた.2002年に呼吸機能検査に異常を認め,5年後に追跡できた41名に関して,新区分で判定した場合有用か検討した.
    結果:旧区分で要経過観察・生活改善(C)は180名,要治療・要精検(D)は17名,新区分ではC57名,D140名であり,Dは17名から140名に増えた.2002年に旧区分でCだった41名を新区分で判定するとC11名(以下CC群),D30名(以下CD群)となった.CC群(平均年齢65歳,平均1秒率67%)は2007年に3名が異常なし(A)に,1名がDに,CD群(各々62歳,64%)は4名がAに,26名がDになった.
    結論:新ガイドラインではDは旧ガイドラインの約8倍増加し,早期診断・早期介入のために有用であった.一方,異常者を多く作ることも危惧された.しかし,従来のC及びDには%肺活量が多く1秒率が低いものも多かった.従って,%1秒量を併用することで,より細やかな判定や指導ができることが期待され,新ガイドラインは有用であった.

  • 菊川 麻由美, 小島 真二, 脇本 敏裕, 伊地知 久美子, 石川 奈美, 関 明彦, 河原 和枝, 藤井 昌史
    2009 年 24 巻 1 号 p. 84-89
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:人間ドック受診者に対して食事を提供している施設は多い.また,生活習慣病対策としての栄養指導では,調理実習やバイキング形式の食事を提供することによって,実際に食べることから学ぶといった手法を取り入れた事例報告もみられる.当院では,人間ドック受診後に提供する食事を保健指導の資料として活用することを検討してきた.そこで私たちは,院内のレストランとの協力によって保健指導に活用しうる健康を意識したメニューすなわち“健康食”の考案を試みた.
    方法:健康食としての定義を決定したうえで,健康診断センターとレストランのスタッフが頻繁に議論し,昼食用3種類,夕食用1種類の“健康食”を試作した.
    結果:人間ドック受診者へのアンケート調査では,これまでの食事の満足度は,「満足」「やや満足」と回答したものが40.5%であったが,新メニューでは62.5%と向上した.この健康食を用いた栄養指導では,食事のバランス,塩分,味つけ,エネルギーの点で食生活の改善のために参考になったとの評価が得られた.
    結論:レストランのメニューとして健康食を提供することで,受診者へのサービスを向上させるだけでなく,保健指導を効果的に行うための資料として活用できると考えられた.

  • 渡辺 直也, 花田 恵, 渡邉 裕子, 和田 真紀, 岡田 光代, 香村 麻理, 大園 達郎, 中西 美知江, 兼田 淳子, 同道 正行, ...
    2009 年 24 巻 1 号 p. 98-103
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:我々は,2000年より,食事・運動などの生活習慣を見直し,効率的な健康づくりにつなぐための参加型生活習慣病教室「ヘルスラン®」を実施してきた.医師・保健師・管理栄養士・運動トレーナーがそれぞれ専門的な立場からアプローチし,内臓脂肪面積測定や血液検査等,データに基づく指導を行っている.改良を加えながらより効果的な教室を目指しており,最新の方法と実績を紹介する.
    方法:2006年9月期~2007年7月期までの全参加者44名中,6ヶ月を終了した34名(男性15名,女性19名,平均年齢57.6歳).6ヶ月間のうち講義,グループワーク,個別指導,運動指導,採血,計測等各4回,内臓脂肪面積は前と3ヵ月後(17名は6ヵ月後も)に測定した.
    結果:6ヶ月後の終了時点で,体重は平均67.4kgから64.2kgと減少(p<0.01),腹囲と内臓脂肪量は,3ヶ月の時点で平均97.0cmから93.0cm,117cm2から94cm2とそれぞれ有意に減少した(p<0.01).皮下脂肪面積は,6ヶ月後にも測定を行った17名で見ると,3ヶ月で12.4%,6ヵ月後で16.7%の減少を認めた.それに伴い血圧,血糖,HbA1c,γGT,ChEが有意に低下し,HDLコレステロールは上昇した.
    結論:大切なのは参加者の動機づけで,指導は,自主性を尊重し,双方向・対話型であること,採血や計測,中でも内臓脂肪面積測定は,大きな動機付けとなると考えられた.この結果をもとに,特定保健指導対応型の費用対効果のよいプログラムを作成していく予定である.
  • 辻 修一, 西岡 康二, 北村 直幸, 末元 幸一郎, 速水 恭子, 田中 綾, 平井 伸彦, 野間 隆義, 南 幸一
    2009 年 24 巻 1 号 p. 104-109
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:デジタル化へ移行しつつある検診画像であるが,一般に普及している表示端末(DICOMビューワー)は,画像を表示させる際に対象者の検索が必要なため,連続して多人数の読影が必要な検診画像の読影には適しておらず,読影の非効率化を生じているのが現状である.今回我々はその欠点を解消すべく検診画像のモニター診断に特化したシステムを開発し,日常の読影業務に運用しているので報告する.
    方法:読影前にはDICOM画像のタグ情報から検査日,受診者ID,氏名等の属性情報を取得し,紙の帳票に代わるデジタル帳票を自動作成する.読影時にはデジタル帳票と画像とを連動させ,マウス,キーボード操作を極力抑え高速な画像切り替え,所見入力を行う.過去画像,過去所見との比較も容易にし,読影後は結果を汎用フォーマットで出力する.
    結果:読影対象となる受診者群を選択するだけで容易にデジタル帳票が作成できた.読影結果の出力,配信も容易となり,読影前後の事務処理が簡素化され,転記に伴う人的ミスが飛躍的に改善した.読影工程においても大部分を占める正常例については高速でシームレスな画像切り替えとともに,所見(異常なし)の自動入力が実現しストレスのない読影環境が構築できた.過去画像,過去所見との比較が容易なため読影精度も向上した.
    結論:検診画像のデジタル情報を一元管理することで読影工程の簡素化,高速化,効率化が実現可能となった.
  • 佐藤 友美, 野崎 良一, 鎌田 智有, 山田 一隆, 春間 賢
    2009 年 24 巻 1 号 p. 110-115
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:大腸腺腫発生のリスクについて肥満を中心とした生活習慣関連因子との関連性を検討する.
    方法:1992年4月から2007年3月までの15年間に高野病院健診センターで内視鏡検査の初回受診者16,647名(男性7,757例,女性8,890例)を対象とし,大腸腺腫発生のリスク因子として加齢,性差,BMI,総コレステロール(Tcho),HDL-コレステロール(HDL),中性脂肪(TG),LDL-コレステロール(LDL),空腹時血糖値(FBS),腹囲(WT)について大腸腺腫との関係を検討した.統計解析は多変量解析ロジスティック回帰分析を用いオッズ比(OR)を算出した.
    結果:大腸腺腫発生の有意なリスクは男女共に加齢により1.03倍,経年変化では男性が40歳代で1.32倍,女性では50歳代から1.32倍とリスクが高くなり,性差では男性のリスクは女性の2.52倍であった.さらに男性では大腸腺腫発生に対するBMI≧25のORは1.270倍,BMI 1増加毎に1.009倍,TG増加は1.001倍,FBS増加は1.003倍,WTの増大により1.016倍とリスクは有意に高くなり,HDL増加は0.994倍とリスクを有意に低下させた.一方,女性ではTG増加は1.002倍,LDL増加は1.003倍,WT増大では1.019倍と有意なリスクとなった.
    結論:大腸腺腫を発生させるリスクには性差では男性,加齢,内臓脂肪の増加に関わる因子があり,それらの予防が発生リスク軽減に寄与すると思われる.
  • 佐藤 友美, 野崎 良一, 鎌田 智有, 山田 一隆, 春間 賢
    2009 年 24 巻 1 号 p. 116-122
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:大腸腺腫発生のリスク要因を生活習慣の時代的変遷の視点から比較検討する.
    方法:1992年4月から2007年3月までに大腸肛門病センター高野病院健診センターで内視鏡検査の初回受診者16,647名(男性7,757例,女性8,890例)を対象とし,大腸腺腫発生のリスク要因を年代別に前期(1992.4~1998.3)と後期(1998.4~2007.3)に区分し,加齢,生活習慣関連因子としてbody mass index(BMI),BMI別分類(非肥満群;BMI<18.5:低体重,18.5≦BMI<25:普通体重,肥満群;25≦BMI<30,30≦BMI<35,35≦BMI),総コレステロール(Tcho),HDL-コレステロール(HDL),中性脂肪(TG),LDL-コレステロール(LDL),空腹時血糖値(FBS)について比較検討した.統計解析のすべては多変量解析ロジスティック回帰分析を用いオッズ比(OR)を算出した.
    結果:大腸腺腫発生のリスクは,男性前期では加齢によるORは1.031倍,TG増加は1.001倍,FBSの上昇では1.005倍と有意に高くなった.後期では加齢により1.028倍,BMI別には普通体重を1とした場合25≦BMI<30は1.28倍,35≦BMIでは2.05倍,TGの増加は1.001倍と有意にリスクは高くなり,HDLの増加は0.994倍とリスクを有意に低下させた.一方,女性では前期のリスクは認められないが,後期のみ加齢に伴い1.029倍,TGの増加は1.002倍と有意なリスクとなった.
    結論:大腸腺腫を発生させるリスクは年次推移とともに変容し,ことに後期では,肥満に関わる要因は大腸腺腫を発生させるリスク要因となり,体重管理が大腸癌の一次予防につながると考えられる.
  • 佐藤 竜太, 根本 直樹, 大澤 健, 渡邊 希, 松本 久美子, 助川 和也, 佐藤 和彦, 草野 涼, 中川 徹, 色川 正貴
    2009 年 24 巻 1 号 p. 123-128
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的・方法:頚動脈エコー検査は動脈硬化の診断,特にスクリーニング検査として有用である.満45歳の男性ドック受診者を対象に,頚動脈の内膜中膜複合体厚(IMT)と生活習慣や動脈硬化症危険因子との関連性について検討した.両側総頚動脈のIMTをIMT自動計測ソフト(日立メディコ社製)を用い計測し,自動計測範囲内の最も厚い部分をIMT-Cmax,平均値をmean-IMTとし,観察可能範囲で最も厚い部分をmax-IMTとして記録した.
    結果:内臓脂肪面積,BMI,耐糖能異常,LDL-C,LDL/HDL比,Metsスコア(内臓脂肪面積が100cm2以上又は腹囲が85cm以上で5点,脂質・血糖・血圧に異常値が有る場合それぞれ+1点)が異常値であると両側のIMTが有意に肥厚する傾向にあった.喫煙による差異は認められないが,喫煙指数600以上の重喫煙群は両側のmean-IMTが有意に肥厚する傾向にあった.高血圧,高中性脂肪,低HDL-Cでは左のIMTが有意に肥厚する傾向にあった.また有意差は認められないが飲酒有り群のほうがIMTが薄くなるという傾向にあった.
    結論:以上の結果のように45歳におけるIMTの肥厚にかかわる因子が示された.今後5年,10年の追跡調査によりIMTがどのように変化し,IMTを肥厚させる因子が明らかになるか経過観察を行っていきたい.
  • 佐久間 一郎, 岸本 憲明, 浅島 弘志, 河合 裕子, 小林 毅, 筒井 裕之
    2009 年 24 巻 1 号 p. 129-136
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:わが国の急性心筋梗塞(AMI)患者ではLDLコレステロール(-C)の低い症例が多い.本研究ではLDL-C低値のAMI患者の脂質プロファイルを対照群のそれと比較し,特にLDL-C/HDL-C比のAMI発症への関与を検討した.
    方法:北海道内のAMI患者955症例と,性別・年齢・地域をマッチングさせて抽出した一般住民健診受診者(健常群)1,892例を対象とした.LDL-Cが日本動脈硬化学会の一次予防目標値(高リスク群)である120 mg/dl未満の75歳以下のAMI患者および健常群で,男女別に各種脂質指標を比較した.次いで,各種危険因子の情報が揃っているAMI患者と健常群で,ロジスティック回帰分析により,AMI発症の有意な危険因子となる脂質指標を男女別に検出した.
    結果:75歳以下の男性AMI 患者571例中313例(54.8%),健常群1,329例中484例(36.4%),75歳以下の女性ではAMI 患者147例中66例(44.9%),健常群228例中70例(30.7%)でLDL-Cが120 mg/dl未満であった.LDL-Cが120 mg/dl未満のAMI症例では男女ともに健常群と比較し,HDL-Cは有意に低く,LDL-C/HDL-Cは有意に高かった.男女ともに,各種脂質指標の中では低HDL-C ,次いで,高LDL-C/HDL-C(>2もしくは2.5)が高オッズ比となり,有意な危険因子となった.
    結論:各種健診でLDL-Cが120mg/dl未満であっても,HDL-CとLDL-C/HDL-Cへの留意がAMI発症予防に重要であることが示唆された.
  • 中島 千枝, 山口 浩, 岩瀬 尚子, 松田 惠子, 千 哲三
    2009 年 24 巻 1 号 p. 137-139
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:健診需要の高まる中,胃部X線検査を含む健診コースが午前中に集中し,混雑による検査精度満足度Quality Satisfaction(以下QSとする)及び顧客満足度Customer Satisfaction(以下CSとする)の低下が考えられる.午後実施の胃部X線検査の有用性の有無を検証し,午前検査実施数の緩和を図り,受診率,QSとCSの低下の防止に努めると共に維持・向上を実現する.
    方法:対象画像を午前と午後の群に分け,診断画像において撮影技師及び読影医師による胃小区の描出を基準にし,視覚的評価にて診断価値の有無を検証する.
    結果:「後壁中~下部」「胃上部」「前壁中~下部」の各区域に於いて多少の評価差はあるものの,胃小区模様の描出は認められ,午前と午後での著明な有意差は認められなかった.
    結論:健診当日の朝食を糖及び脂質を含まない食品に限定することにより,午後の胃部X線検査は午前と同様の有用性を認め,画像診断の有効性を立証した.
  • 本間 聡起, 鈴木 博道, 兵藤 郷, 宮木 晶子, 菅原 幸枝, 青栁 幸利, 長谷川 高志
    2009 年 24 巻 1 号 p. 140-145
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:生活習慣病の予防には,各個人特有の生活習慣を把握し,それに基づいてテーラーメイドの指導と動機付けを図ることが重要である.われわれは加速度センサ付き歩数計(身体活動計)での日常活動量の把握と血圧計などでのモニタリングを行い,そのデータを定期的にサーバに送信したうえで,その解析結果を生活習慣改善の指導箋とともに対象者にフィードバックする遠隔医療システムを開発し,その実用性を検討した.
    方法:20名の沖縄県在住の対象者が身体活動計の常時装着と,血圧計,体組成計,心電計の自己計測を随時行い,サーバに送られたデータの解析後の結果と生活習慣改善のための指導箋が対象者に返送された.
    結果:平均年齢53.8歳の男女の対象者のうち,1ヶ月間で1日平均歩数が7,177歩から8,026歩に,4METS以上の1日平均運動時間が19.3分から22.5分に増加した延べ7例で拡張期血圧が92.6mmHgから90.1mmHgに減少した(p=0.09).また試行時の問題点から医学的リスクマネジメント法も加味し,プログラム導入時に健康診断や人間ドックの結果を利用した2段階のエントリーアセスメントを経て,翌年の健診時に再評価を行うPDCAサイクルのプログラムを確立した.
    結論:短期間で少数例ながら本プログラムによる生活習慣病の改善効果の可能性が示された.また健康診断や人間ドックの結果も活用する運用法を開発した.
  • 丸山 美江, 福井 敏樹, 吉鷹 寿美江, 山内 一裕, 安田 忠司, 安部 陽一, 深見 孝治
    2009 年 24 巻 1 号 p. 146-150
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:我々は今まで,空腹時インスリン値(fasting immunoreactive insulin :F-IRI)が糖尿病のみでなく生活習慣病全般と関連があることや,肥満が重要な因子であり,体重の増減に伴いF-IRIも変化することを報告してきた.また,F-IRIがインスリン抵抗性の指標であるhomeostasis model assessment of insulin resistance (HOMA-R)と強い相関があり,F-IRIがより簡便なインスリン抵抗性の指標となることを報告した.今回は肥満に関する因子の中で最もF-IRIに影響を持つ因子を再検討することを目的とした.
    方法:対象は当施設での人間ドック・健診を受診し,F-IRIと内臓脂肪面積を共に測定した744名.年齢,性別や生活習慣病の項目にbody mass index (BMI),腹囲,体脂肪率,CTによる内臓脂肪面積,皮下脂肪面積,総脂肪面積を加えて,多変量重回帰分析を行った.
    結果:単相関では内臓脂肪面積は皮下脂肪面積よりもF-IRIとの相関が大きかったが,重回帰分析では内臓脂肪,皮下脂肪の合計である総脂肪面積がF-IRIの最も強い規定因子となった.また,変化量の解析では,内臓脂肪面積に比べて皮下脂肪面積の変化量の方が,F-IRIの変化量との相関が強かった.
    結論:内臓脂肪だけでなく,皮下脂肪も含めてインスリン抵抗性を考える必要性が示唆された.

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