抄録
目的:加齢に伴う聴力障害は良好なコミュニケーションを妨げ,生活の質の低下につながる.聴力障害に関与する外的要因を明らかにすることは,聴力障害の予防,ひいては生活の質向上に寄与する.今回われわれは喫煙習慣が聴力に及ぼす影響について検討した.
方法:2010年4月から2011年9月の間に当クリニックで聴力検査を含む健診を受けた8,943名(男性4,647名,女性4,296名)を対象とした.標準純音聴力検査を1,000Hz,4,000Hzについて行った.1,000Hzでは30dB HL以下を,4,000Hzでは40dB HL以下をそれぞれ正常とした.喫煙状況は特定健診の質問票により得,喫煙群,禁煙群および非喫煙群の3群に分けて検討した.統計解析はχ2検定を行い,有意水準はp<0.05とした.
結果:男性では喫煙群および禁煙群において非喫煙群に比べて有意に聴力障害者が多かった.また,男性では禁煙群において喫煙群に比べて有意に聴力障害者が多かった.
結論:喫煙習慣は聴力障害の危険因子であると考えられた.防煙および早期の禁煙が加齢に伴う聴力障害の予防につながる可能性が示唆された.