抄録
目的:ロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)は,少子高齢社会における運動器の障害の予防を一般社会に啓発すべく,日本整形外科学会によって提唱された新概念であるが,被験者が自身の運動器の状態を7項目のロコチェックで判定し,予防のために開眼片脚立ちとスクワットからなるロコモーショントレーニング(以下,ロコトレ)を行うようデザインされている.ただ,ロコチェックの陽性率が50歳代以前では低いこともあり,若年のうちから予防を促すという意味合いでは,やや響きが薄いきらいがある.2014年にその欠点を解消するために,立ち上がりテスト,2ステップテスト,ロコモ25(25項目のアンケート)の3項目からなる新たなロコモ度テストが追加された.しかし,上記テストはまだ発表後日も浅く,正常値の集積も充分ではない.そこで今回,当院人間ドック(マックスライフ)でロコモ度テスト参加希望者を募り,青壮年期のデータを収集するとともに,ロコモ度テストが将来人間ドックにおける運動器健診として採用可能であるかどうか検討を行った.
方法と結果:ロコモ度テスト参加希望者は20歳から74歳の246名である.2ステップテスト,立ち上がりテストは年齢に従って低下を示したが,立ち上がりテストのほうが,機能低下の進行が顕著であった.
結論:上記の3つのテストは,試行中特に事故もなく,将来,人間ドックで運動器健診の採用を考える場合に有用な選択肢になると思われた.