抄録
多発性嚢胞腎は最も頻度が高い遺伝性腎疾患であり,1990年代の二つの原因遺伝子の発見を端緒に,発症の機序,増悪に関わる因子などの解明が進んできた.特に,環状アデノシン一リン酸(cAMP)が細胞内の重要なシグナルで,産生,代謝にバソプレシン受容体を介するため,その阻害剤トルバプタンが臨床レベルで治療薬として実用化された.青年期以降で症状がみられるようになり,緩徐に進展するため,早期の発見,治療はしばしば困難であつた.しかしながら,治療薬の登場は,その投与病期,年齢,また早期投与の意義などが臨床的問題点となってきており,潜在的な患者を見出す意味が今後出てくるものと推測される.当院への初診理由でも人間ドックや検診など,非特異的な症状や偶発的な指摘によることを考えると,今後人間ドック,健診などにより指摘された患者で確実な診断と専門医への紹介,管理・治療の誘導に導けることは重要な意義を持つと考えられる.