2017 年 32 巻 3 号 p. 491-497
目的:人間ドック受診成績を1年ごとに統計を取り,NAFLD症例の頻度・受診成績の変遷を歴史的に検討した.
方法:1996~2015年の当院総合健診センターの受診者から,各年の平均年齢やNAFLD頻度を算出し,20年間の変化を検討した.NAFLD例の健診結果を,前期(1996~2005年)と後期(2006~2015年)の2群に分け比較した.
結果:1996~2015年の受診者は延べ180,248名,NAFLDは39,627例(頻度は22.0%).男女別NAFLD頻度は男/女=28.6/11.1%,有意に男性が多かった.年齢・性別に頻度を検討すると,39歳以下(男/女=25.5/4.1%),40~49歳(30.6/7.9%),50~59歳(29.0/16.0%),60歳以上(25.6/19.7%)であった.男性では39歳以下の頻度が有意に低く,40歳代と50歳代の頻度が有意に高かった.女性では年齢とともにNAFLDの頻度は多くなり,60歳以上が最も有意に高かった.前期/後期でのNAFLD頻度を比較すると,19.0/23.8%で,有意に増加していた.前期/後期に分けてNAFLD例の健診結果を比較すると,AST,ALTやTGは,前期の方が有意に高値.年齢,BMI,HDL-C,空腹時血糖,HbA1cやFIB-4 indexは,後期の方が有意に高値であった.異常値を呈する頻度を比較すると,ASTやALT,脂質異常の頻度は前期が,高血圧や高血糖,BMI高値の頻度は後期の方が有意に多かった.
結論:健診受診者におけるNAFLD症例の頻度は,いまだ漸増傾向である.健診結果をみると,近年のNAFLDにおいてBMIや耐糖能に関する検査値が上昇していた.また,FIB4-index値の推移からは,人間ドック受診時に肝線維化が進行しているNAFLD症例が増加している可能性が示唆された.