抄録
関節リウマチに対する治療方法は,メトトレキサート,生物学的製剤の開発により劇的に進歩し,予後が改善されている.すなわち,治療の目的は,単に関節炎の炎症を抑え自覚症状を軽減することではなく.関節の構造を維持しその機能障害を予防し,生活の質を高めることにある.また,骨関節破壊の進行は,発症後数年以内に進行する.このため,人間ドック健診においても,自覚症状として関節痛を有する受診者から,適切に鑑別診断を行い関節リウマチの疑いがある場合,リウマチ専門医に紹介し早期の治療介入に入ることが重要である.現在,関節リウマチの分類には,2010年,アメリカリウマチ学会とヨーロッパリウマチ学会が合同で提唱した新しい分類基準が用いられる.関節腫脹が示唆する関節炎の部位として,小関節が重視され,また,人間ドック健診における二次検査として,リウマトイド因子以外,抗シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体,ACPA)が測定される.すでに適切な治療により寛解状態となった関節リウマチを人間ドック健診で診療する場合,薬剤の有害事象,動脈硬化の危険因子,悪性腫瘍,骨粗鬆症に留意すべきである.