抄録
目的:健診における病歴情報は重要で,当センターでは診察時に医師が問診票を確認しているが,治療中なのに記入がない例が散見される.本研究では,問診票記入漏れの状況を調査し,病歴聴取の注意点を検討した.
方法:対象は,2016年1~2月と7月,2017年7月の計21日間に著者が診察した794人である.問診票記載または問診により高血圧,糖尿病,脂質異常症の3疾患に関する内服の「有」と,現病歴(マークシート式)の高血圧,糖尿病,脂質異常症,高尿酸血症,心疾患,脳血管疾患,がんの「現在治療中」に該当するが,1箇所でも問診票に記入漏れがあった者を集計した.性別や初診か否か等と記入の有無との関連をχ2検定で検討した.また,2016年7月以降に調査した504人については手術歴の記入漏れも集計した.
結果:対象疾患該当160人のうち,記入漏れがあったのは56人(35.0%)であった.服薬の有無の記入漏れは1人で,他はマークシート式の現病歴の記入漏れで,項目は脂質異常症(38人)が最も多く,次いで高血圧(17人)であった.統計的に初診の者が有意に少なかった.手術歴の記入漏れは106人で,虫垂炎(50人)が最も多かった.
結論:問診票には一定の記入漏れが存在することを考慮し,記入しやすい問診票や,専門職による追加問診が重要な役割を持つ.また,初診で聴取した情報を継続できるシステムが有効である.