人間ドック (Ningen Dock)
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原著
健診データからみた低尿酸血症の頻度と合併症に関する検討
田中 謙二草場 公宏一矢 有一森田 一徳鴨井 逸馬桑原 康雄吉開 泰信庄田 昌隆
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2019 年 34 巻 3 号 p. 483-488

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抄録

目的:腎性低尿酸血症は,腎臓での尿酸の再吸収の障害が原因であり,日本人では比較的多いと報告されている.また,腎性低尿酸血症は腎機能の低下や尿路結石,運動後急性腎不全の危険因子といわれている.しかし,その頻度などは明らかではない.今回,低尿酸血症とその合併症の頻度を明らかにするために一般財団法人船員保険会(以下,船員保険会)で健診を受けた受診者を対象に検討した.

対象:船員保険会を2016年1月から12月の間に受診した受診者のうち,血清尿酸値と血清クレアチニン値を測定した317,952人(男性203,166人,女性114,786人)を対象として分析した.低尿酸血症を示した受診者のうち,過去に受診歴がある場合は10年間遡って血清尿酸値を確認し,一度でも尿酸値>2.0mg/dLを示した場合は低尿酸血症群から除外した.低尿酸血症の定義は血清尿酸値≦2.0mg/dLとした.

結果:男性230人,女性301人が低尿酸血症と診断され,頻度は男性0.11%,女性0.26%であった.従来,腎機能の低下を認めると報告されていた男性の腎機能は対照群よりも良好であった.受診表の既往歴欄の検索では,尿路結石の頻度は多くはなく,腎不全の既往は低尿酸群では確認できなかった.

結論:日本人集団の健診データの解析から低尿酸血症の頻度は男性0.11%,女性0.26%と推定された.本症における腎機能は対照群と比べてむしろ良好であり,尿路結石の合併頻度も高くはなかった.また,運動後急性腎不全の既往はみられなかったが,正確な頻度についてはさらに検討が必要である.

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© 2019 公益社団法人 日本人間ドック学会
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