2020 年 35 巻 2 号 p. 132-144
尿酸は痛風,尿路結石の原因として長くにわたって認識されていた.
近年の基礎研究の進歩で,新しい尿酸の排泄に関与する尿酸トランスポーターABCG2が同定され,遺伝子解析で機能が明らかになり,高尿酸血症例における痛風発症を予測しうることが可能となっている.ABCG2は腸管にもあり腸管からの尿酸排泄に関与し,腸管からの尿酸排泄低下による高尿酸血症は,腎外排泄低下型(腎負荷型)と呼称され,高尿酸血症の病型分類が新しく改訂された.
臨床面ではメタボリックシンドローム,肥満,糖尿病,高血圧,慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)などでの高尿酸血症は,従来二次的なものとして把握されていたが,臨床研究により高尿酸血症が,進展因子であるとともに発症因子であることが明らかにされている.虚血性心疾患,心不全,心房細動,非アルコール性脂肪肝炎(non alcoholic steatohepatitis: NASH)にも高尿酸血症が関与する成績が報告されている.諸疾患の発症への独立したリスク因子となっている.
呼吸器疾患,認知症,骨粗しょう症などと尿酸に関しては報告が少なく今後検討が必要である.
高尿酸血症に伴う酸性尿も疾患のpredictorであり意義が明らかにされつつある.古くて新しい知見で尿酸および酸性尿を認識するとともに適正に管理することは重要である.
尿酸生成抑制薬が40年ぶりに開発され,腎機能障害例にも使用可能である.高尿酸ラットにおける細動脈硬化病変はヒトの腎血管病変に類似している.腎性低尿酸血症の診療ガイドも発刊された.
健診の場で,古くて新しい尿酸の意義を確立することは重要であろう.